特別国会は7月17日に会期末を迎える。残り1カ月を切り、高市早苗首相の抱える課題は山積している。
高市がかねてから掲げてきた「食料品などの消費税ゼロ」については、社会保障国民会議の実務者会議議長である小野寺五典・自民党税調会長が、来年4月から2年間、食料品などの消費税を1%とする「議長案」を取りまとめた。これまで高市は総理官邸などで頻繁に小野寺と会合を重ねてきたことから、この「議長案」は高市の意向を反映させたものと見て良い。
しかし、2年間に限定したとしても、減税に伴う財政負担は10兆円規模になると試算されている。日本の財政力が市場で不安視される中での断行が「さらなる日本売り(=円安)を引き起こすのではないか」と懸念する声は、与党内や霞が関の官庁からも聞こえてくる。
公明党に「意趣返し」したい高市総理
そして消費減税に加えてもう一つ、高市の悩みの種となっているのが、連立を組む日本維新の会との関係だ。
高市「今国会の会期がもう残り1カ月を切る中ですので、皇室典範改正、定数削減法案、副首都法案といった重要法案について、今国会で成立させるべく党首同士で意見交換を行いました」(6月22日・与党党首会談後)
日本維新の会の吉村洋文代表との会談後、高市は会期末までに重要法案を成立させるべく、与党で協力して取り組むことを確認したと訴えた。去年10月に少数与党だった自民党の総裁・高市が総理に就任できたのは、公明党が連立離脱する中、維新がにわかに接近してきたからだ。その際、維新の吉村が高市に求めた“見返り”が、衆議院の定数削減と副首都構想の法制化だった。
吉村「(高市総理との党首会談では)定数削減についても話をした。これはまさに連立合意で交わした内容でもあり、非常に重要なことだと思っている」(6月22日・与党党首会談後)
吉村は、高市が定数削減について今国会で「やりきる」と確約したと、報道陣らに強調した。自民と維新がまとめた法案の内容は、今後、各党各会派で議論をした上で1年後に至っても結論が出ない場合は、いまの定数(465議席)のおよそ1割にあたる45議席を比例の定数から削減するというものだ。
現行の制度では、衆議院の定数は小選挙区289に対して比例区が176だ。仮に与党が提出する法案の通りになった場合には比例議席が131まで減る。
今年2月の総選挙で、自民・維新の与党が歴史的な大勝を収めた一方、野党側は比例区に救われた議員が大半だ。立憲民主党と合流し中道改革連合を結成した旧公明党(衆院)の各議員は、全員が比例上位であったために議席を確保できた。また野党の中では比較的健闘した国民民主党も、獲得した28議席のうち小選挙区での勝利はわずか8に止まり、20議席は比例で獲得したものだ。
つまり、自民と維新の法案は、言うまでもなく野党側に厳しい案になっている。
「この案では国民民主や公明は呑めないだろう」(自民党議員)
去年の公明党の連立離脱で煮え湯を飲まされた高市からすれば、同党とその支持母体である創価学会の勢力を削ぐことは「意趣返し」にもなる。実際、高市は定数削減にかなり乗り気と見られている。
「参院で廃案」が自民幹部のシナリオ
しかし、自民党内では冷ややかな見方が大半を占める。
自民党単独で衆議院の3分の2以上の議席を獲得した今、参議院で否決された法案も、衆院で再議決することが可能だ。一部の自民党議員からは「これで維新と組む必要はなくなった」と“維新不要論”も飛び交う。
さらに、自民党内には麻生太郎副総裁など、国民民主党との連立を摸索する勢力も多い。自らの首を絞めることにもつながりかねない「定数削減」については、大半の議員が慎重もしくは否定的なスタンスを示している。
それでも、厳しい状況下で支援の手をさしのべてくれた維新との合意について、「総理はかなりこだわっている」と高市周辺は指摘する。また、党内に確固たる基盤を持たない高市にとっては、吉村や藤田文武共同代表、遠藤敬総理補佐官などの維新幹部は、数少ない気の置けない友のような存在となっている。
自民党は高市の意向を踏まえ、不承不承ながらも定数削減の与党案を了承したが、ある閣僚経験者は「衆院では通すが、(与党が少数である)参院で反対されて廃案というのが一つのシナリオ」という。
つまり維新の顔を立て衆院では通すが、参院では立憲・公明・国民などの強硬な反対が予想されるため、結局は成立しないだろうと楽観視しているのだ。
しかし、吉村はこうしたシナリオに納得するのだろうか。
定数削減法案は去年の臨時国会で継続審議、つまり先送りにされた。今回の特別国会でも成立が見送られるとしたら、来年春に府知事選を控える吉村の求心力にマイナスの影響を与えることも考えられる。約束事にこだわる高市が、自民党の思惑に唯々諾々と従うのかも疑問だ。
カギを握る公明党の思惑
とはいえ、自民党も定数削減をそのまま呑めない切実な事情を抱えている。党幹部の一人は周囲に次のように語っている。
「これからの地方選挙を考えると定数削減は難しい」
この発言が意味するところは、公明と国民が嫌がる定数削減を成立させた場合、今後の地方選挙が戦いづらくなるということだ。