連載|カルチャー

マイケル・ジャクソンは本当に「オリジナル」だったのか

2026年7月20日


<span>マイケル・ジャクソンは本当に「オリジナル」だったのか</span>
オークションにかけられたマイケルのステージ衣装など(C)ロイター

 街で「ナポレオン・ジャケット」が流行っているというファッションの記事を見て、思わず心が苦笑いしてしまった。そもそもあの服は、そういう名前だったのか。

 きっかけは6月に公開された、映画『Michael/マイケル』の大ヒットだ。絶頂期のマイケル・ジャクソンが踊るときに纏った、胸部に大きな装飾のめだつ王子様風の上着を、覚えている人も多いだろう。日本ではビジュアル系のバンドなど、貴族っぽいマッチョさを誇示するパフォーマーが選ぶ衣装だったが、いまは女性も好んで着るという。

 歴史上の絵画で有名な、ナポレオンの軍服姿にヒントを得ていることから、そうしたデザインを「ナポレオン・ジャケット」と呼ぶらしい。だとすると結構、深い問題がここにある気がする。

 流行ってるからといって、ぼくがいまそのジャケットを買いに行くかというと、まぁ、しない。自分が着てみても、マイケルの「パロディ」にしかならないからだ。

 この人、よっぽど「マイケル・ジャクソンが好きなんだね」というメッセージにはなっても、キマってる・カッコいいとは、あまり言ってもらえそうにない。しかし、衣装の名前にナポレオンと入っているとなると、話が変わってくる。

 当のマイケルもまたステージで、ナポレオンの「パロディ」を演じたのかもしれない。実際にキング・オブ・ポップと呼ばれるようになってからは、音楽性から黒人らしさが薄れ、白人の嗜好に寄せ過ぎだとの非難を被ることも多かった。

 さらにはナポレオン本人がそもそも、あまり由緒の正しい貴族ではない。もとはジェノヴァ共和国に付随するコルシカ島の出身で、領有権を買いとり侵攻したフランス軍に父親が寝返ったことで、栄達の契機をつかんだにすぎない。

 1804年の有名な皇帝への即位式も、古代ローマの様式を模していたとよく指摘される。その意味ではナポレオンとその帝国もまた、かつての英雄たちの神話を「パロディ」にしてなぞっただけとも言える。

 どれだけ遡っても、これがホンモノだという存在は見つからず、誰かのモノマネにしか出会えない。思えば、そんな自覚が生まれたのもまた、マイケルがスターになってゆくころだった。

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