知識ではなく経験が
夏はお化け噺のシーズンである。明治の名人・三遊亭圓朝や四代目橘家圓喬の怪談を聞いた客は、暗い帰り道の途中、後ろから誰かがつけてくるような気がして必死に駆け出し、飛ぶように家路についたという。
怪談は今でも人気だが、人々は「同じもの」を怖がっているのだろうか。圓朝や圓喬に震えた明治の人たちは、死んでゆく、もしくは死んでしまった人間を数多く目にしていたはずだが、現代では「死」は人の目に触れないように「配慮」されている。人を葬るのも、明治はまだ土葬が多かったが今はほとんどが火葬になった。テレビその他でもツルツルの人間の髑髏がアップになることはあるが、本物の死体が映し出されるなんてことは滅多にない。