既存政党や政治家への低い評価
Z世代の若者は、はたして保守化しているのか、それとも左へと傾いているのか。
日本のメディアでは近年、どちらの傾向も指摘され、アメリカを観察する者誰しもが頭を悩ませる問いである。昨年9月、ドナルド・トランプを支持してきた若き右派のチャーリー・カークが暗殺された際、カークが立ち上げた政治団体「ターニングポイントUSA」に参加する若者たちに注目が集まったのは記憶に新しい。その一方で同じく昨年11月、ニューヨーク市長選挙で民主社会主義者を名乗るゾーラン・マムダニが当選した際には、若者がこぞってかれを支持したことが報じられた。
ニューヨーク市でのマムダニの勝利にかんして言えば、タフツ大学ティッシュ・カレッジの研究センターであるCIRCLEの研究者たちが指摘しているように、年齢の高い層と同様に、若年層の有権者が直近数回の選挙で重視した争点は、生活費の高騰とインフレだった。生活の不安が前回2024年の大統領選挙では若者の票を右へと傾かせたのであり、昨年のニューヨーク市長選挙ではそれがマムダニ支持に結びついた。
マムダニ登場の前から言われているとおり、アメリカで社会主義という言葉に共鳴する者が一定程度いるとしても、生産手段の国有化といった伝統的な意味合いで、この言葉を頭に思い浮かべている者が多いわけではまったくない。安価な家賃や食料品の供給、あるいは医療福祉の拡充こそが、社会主義という言葉によって期待されていることであり、マムダニはそのことをよくわかっている。自分たちの直面している生活の不安に向き合っていないと思われているからこそ、既存の政治家たちは若者たちから嫌われているのであって、ラディカルな左派の理念を追い求めることに積極的に関心がある者は一部に限られる。
経済への不安と、それにきちんと対応しない既存の政治への不信は、アメリカの若者を対象とした他の調査結果でもはっきりと示されている。今年の春、ハーバード大学のケネディスクール政治研究所は、ハーバード・ユース・ポール(Harvard Youth Poll)という世論調査の結果を公表している。日本語に訳せばハーバード大学若年層世論調査であるこの調査は、アメリカの18歳から29歳を対象にしたものとして、2000年から継続して実施されており、今回が第52回である。
公表された調査報告が書いているように、アメリカの若者の半数近くが、インフレと住宅価格の高騰によって大きな影響を受けていると回答し、これらを全国的な危機であるとみなしている。興味深いことに医療(ヘルスケア)については相対的に高くはなく、大きな影響を受けているとの回答は3割にとどまっている。障がいや疾病、あるいはアメリカの場合は薬物に苦しむ者も含まれるとはいえ、相対的に健康な者が多い若者の場合、高齢者とは関心の力点に違いがあることがうかがわれる調査結果である。
政治にかんする調査項目に目を転じれば、「この国は正しい方向に向かっている」と回答した者は13パーセント。59パーセントは「誤った方向に向かっている」と答えている。トランプ大統領の仕事ぶりを評価する者は25パーセント。民主党と共和党の連邦議会での仕事ぶりについては、評価する者はどちらの党についてもほぼ同じ、20パーセント台である。トランプ大統領は言うに及ばず、すくなくとも連邦レベルの政治について、既存の政党や政治家にたいする評価は低い水準にとどまっており、自国の行く末に悲観的な若者がいかに多いのかがわかる。
データからは裏付けられない「若者の保守化」
7月4日は独立記念日だった。今年はとくに建国250周年を盛大に祝うイベントが首都ワシントンでおこなわれた。式典に立ったトランプ大統領は、アメリカが達成してきた歴史的な偉大さを聴衆の前で語ったが、他人事のように感じていた若者も少なくなかっただろうことが想像される。
ハーバード大学若年層世論調査に話を戻せば、有権者登録をしている者に限定したうえで、民主党に投票すると回答した者は45パーセント。共和党に投票すると回答した者は26パーセントである。この数字をみるかぎり、既存の政治や政治家にたいする不信感はアメリカの若者のなかにきわめて根深いとはいえ、若者の支持政党をめぐっては、民主党優位という傾向は数字のうえで示されていると言える。アメリカの若者は保守化しているという指摘は、どうやら世論調査では裏づけることができなさそうである。