「50億-100億ドル」と記された「やることリスト」
ドル円は7月23日、一時163.99円と1989年12月以来の高値を更新した。背景には、米イラン対立の激化に伴う原油高と「有事のドル買い」の再燃、21日に閣議決定された骨太の方針において日銀の独立性への言及が脚注にとどまったことに対する市場の疑念、30日に閣議了解された概算要求基準で成長投資枠の予算要求額に上限が設けられず財政規律への懸念が増したこと――などが複合的に絡み合っていた。一方で、米国では28-29日に開かれた連邦市場委員会(FOMC)の金利据え置き、30日に発表されたQ2実質GDP(国内総生産)速報値の減速や6月個人消費支出(PCE)価格指数の鈍化があり、9月利上げ観測が後退。ドル全面高の勢いに陰りが見えるところで、日本政府・日銀は30日夜に介入に踏み切り、1月23日以来のニューヨーク連銀によるレートチェックも追随した。この日は韓国当局も同時に動いたとみられ、事実上の三者協調と報じられている。
加えて、英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙によれば、翌31日には米財務省自身も動いた。ニューヨーク連銀が財務省の代理として、異例にもユーロを売って円を買うという手法で為替市場に参入し、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレー経由で執行したという。米国が円買いで日本と協調介入に踏み切ったのは1998年以来となる(2011年の協調介入は、G7として円売り介入を実施)。なお、31日のNY時間引け後には、閣議中にスコット・ベッセント財務長官の机上に置かれた「やることリスト」の写真が報じられ、そこには「円買い、50億-100億ドル」と明記されていた。これまで米国の介入額として、円買いで最大は1998年6月17日の8億3300万ドル、円売りで最大は2011年3月18日の10億ドルであり、もしこの「やることリスト」通り50億-100億ドル規模が実行されたのならば、過去最大級の規模となる。ただし、1回の介入額としてはあまりに大きく、複数回に分けて実行する含みとも読み取れ、投機筋への牽制も兼ねた、ベッセント戦略の「妙」と言えよう【チャート1】。