<span>AIで「仕事」はなくならない、でも「あなたの仕事」はなくなるかもしれない――2040年「奪われる職業」「残る職業」の境界線</span>
(Jack_the_sparow/Shutterstock.com)

AIによって、人間の仕事は奪われるのか。経済学の知見から見れば、技術革新で雇用全体が長期的に減少したことはなく、AI時代にも新たな仕事が生まれる可能性は高い。だが、それは「いま働いている人の仕事が守られる」という意味ではない。AIで消える仕事と生まれる仕事の間で、労働者の“大移動”が起きるからだ。では、2040年に価値を持つのはどんな人材なのか。社会は何を変えるべきなのか。AIと労働市場の関係を研究する経済学者の宮本弘曉氏が、2040年の「雇用」、「賃金」、「組織」の未来を読み解く。

AIで雇用は減るのか増えるのか

 生成AIは、電気やインターネットと同じようなインフラに必ずなります。そうした汎用的な技術ですから、仕事でAIを使わないという選択肢はもうありません。電気があるにも拘わらずろうそくで生活したいという人もいるかもしれませんが、基本的には便利な電気を使います。AIも同じです。

 AIを使うことを前提にしたとき、これまでの技術とAIの決定的な違いが一つあります。それは、知的な労働、つまり人間の頭脳の部分に足を踏み入れてくる技術だということです。文章を書いたり、調べたり、あるいは曲や動画を作ったりなど、そういったことがAIで全てできてしまいます。これまでの技術革新というのは、工場の現場で機械が登場し、肉体労働を代替してきた。AIはそれとは全く異なる、いわゆるホワイトカラーの仕事を直撃する技術なのです。

 では2040年の未来を考えたとき、AIによって雇用は減ってしまうのでしょうか。これまでも、新しい技術が登場するたびに「人間の仕事がなくなる」と言われ続けてきました。しかし経済史を振り返ると、意外に思われるかもしれませんが、技術革新で短期的に失業が増えることはあっても、長期的に雇用が失われ続けるということはありません。産業革命期のイギリスでは、工場労働者の雇用への不安から機械化に反発するラッダイト運動も起きましたが、その後も新しい産業や仕事が生まれブルーカラーの雇用はむしろ拡大していきました。

 アメリカのある調査では、2018年時点の雇用の約6割が、1940年には存在しなかった職種に含まれるという結果があります。つまり、それは1940年から2018年までの約80年間にさまざまな技術が登場し、既存の仕事が失われてきた一方で、新しい仕事も次々と生み出されてきたということです。私は経済学的な知見から考えて、AIによって新たに生まれる仕事のほうが多くなり、雇用は増える可能性が高いと考えています。

 ただし、これはあくまで経済全体で見た話です。例えば、いま100人分の仕事があるとします。AIが普及した結果、それが最終的に110人分になるかもしれない、あるいは100人分のままかもしれません。しかし、仕事の総数が100人分のままだからといって、もともと働いていた100人全員の仕事がそのまま残るわけではありません。その数字の内側では、人々が就く仕事の「ガラガラポン」が起こっています。つまり、経済全体で雇用がなくならないということと、一人ひとりが失業しないということはまったく別の話です。経済全体では雇用が維持されたとしても、個人では失業する人もでてきます。

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