<span>AIで「評価制度」は初めて完成する それでも人間にしかできない「評価」とは</span>
(Jag_cz/Shutterstock.com)

誰も半年前の仕事を覚えていない、細かな評価制度を作るほど人事の負担が増えていく。こうした企業が長年抱えてきた評価制度の問題点は制度設計ではなく、人間の「認知の限界」にあった。AIが仕事の過程を記録し、個人の成果や成長を継続的に捉えられるようになれば、70年前から描かれてきた評価制度の理想が初めて実現するかもしれない。では、すべてを精密に評価できる時代に、人間の上司の仕事には何が残るのか。

評価会議の席で、半年前の仕事を誰も覚えていない

 前回、現場がAIに乗ってこないのはリテラシーの問題ではなく、取り分の未設計の問題だと書いた。では、その取り分は誰がどうやって決めるのか。会社には、そのための機構がすでにある。評価制度である。今回は、この評価制度がAIによってどう変わるかを書く。先に結論を言えば、評価制度はAIによって壊れるのではない。初めて完成する。

 はてな、ミクシィ、そしてスマートニュースで、私は評価制度を運用する側にいた。半期評価の会議に座り、等級テーブルを引き、目標設定の面談をした。その実務のなかで、私は同じ場面に何度も出くわした。評価会議の席で、評価する側もされる側も、半年前の仕事を覚えていないのである。資料をめくりながら記憶を掘り起こし、ようやく思い出した仕事について、当人がぽつりと言う。あれは、いま思えばあまり価値がなかったですね——。半年前に全力で走った仕事が、半年後の会議室では誰の記憶にも残っていない。それでも給料の改定は年に1回、通期評価でしか行われない。

 スタートアップは変化が速い。事業が変わり、組織が変わり、サービスを使うユーザーが変わる。その変化のなかで、評価だけが半期と通期という暦のリズムで動く。実際の仕事と評価のあいだのギャップは、開く一方だった。

 等級テーブルにも同じ構造の問題があった。営業、マーケティング、開発、経営企画。職種ごとに等級を細かく設ければ、働く側は良いことずくめのように感じられる。キャリアの道筋が見え、評価への納得が生まれ、どうすれば昇進し報酬が上がるかがわかる。細かく丁寧な評価は公平さにつながる、というのは論理的には正しい。

 だが細かくすればするほど、評価者の負担は膨れ上がる。突き詰めれば人事部が破綻する。細かくしたいが、細かくできない。この矛盾を、私はずっと抱えていた。

 目標設定はさらに難しい。正しい目標とは何か。ある人にとってのストレッチ——一応説明しておくが、人事の世界では、背伸びすればぎりぎり届く目標水準をこう呼ぶ——は、別の人にとっては到底届かない無理難題である。そもそも1.5倍がストレッチなのか、2倍がストレッチなのかも人によって違う。部門によっても違う。営業に2倍を課せばそれは正真正銘のストレッチだが、開発に2倍を課せば、技術の工夫ひとつで解けてしまう余地がある。ストレッチのかけ方は、個人、組織、部門ごとに変えなければならないのだ。

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