Q1 「長期金利3%」という数字が持つ意味
実際に長期金利が3%を超えたいま、まず警戒すべきは設備投資と不動産投資への需要がどれくらい冷えるか、という点だと考えます。
金利が上がったときに最も懸念されるのは、その金利水準に見合うリターンが得られなければ、投資ができなくなるということです。企業は当然、投資判断に慎重にならざるを得ませんし、そうして設備投資が鈍れば、経済成長も緩やかになっていく。この連鎖を心配しています。
心理的な影響も無視できません。「3%突破」というヘッドラインは、数字そのものが持つインパクトとして企業心理に作用します。今のところ、金融市場が即座にショックを受けたわけではありませんが、気になるのは為替への波及です。
国内の金利が3%まで上がると、国債や預金など日本で持つ資産が生み出すインカムゲインの魅力が相対的に上がり、海外から日本へ資金が流入しやすくなります。つまり、円高圧力が高まるということです。9月8日には一時1ドル152円台まで急激な円高が進んでいますが、これは米国の介入に加えて、こうした「レパトリエーション」の動きが背景にあるかもしれません。引き続き150円を切るペースで急激に円高が進んだ場合、株式市場への影響は相当大きくなると指摘する人もいます。
なぜなら、上場企業には輸出企業の割合が高く、円高になれば企業収益の見通しが一気に変わるためです。代表的な例が自動車メーカーで、想定為替レートの設定次第で利益予想が大きく狂うのですが、トヨタなどは前回の四半期決算発表時にこの想定為替レートを160円に設定しています。
金利3%という数字そのものより、「3%→円高→企業収益悪化」という経路が、今最も注意すべきトランスミッション・メカニズムだと思っています。
Q2 最初の「綻び」はどこに現れるのか
長期金利の上昇を、株式市場、銀行、企業、政府、家計のそれぞれで整理してみましょう。この中で最も敏感に反応するのは株式市場です。株価は「先行指標」として、将来の企業収益を今の株価に織り込んでいくので、変化の兆しをいち早く映すためです。
次に変化が現れるのが、企業収益そのものです。金利上昇によって利払い費が増加し、収益を圧迫します。特に注意すべきなのが、成長株(グロース株)です。成長株の株価は、5年後、10年後といった遠い将来の利益を現在価値に割り引いて評価されます。
金利が上がれば将来の利益に対する“割引率”が上がり、遠い将来の利益ほど現在価値が大きく圧縮されます。「グロース株は金利に弱い」と言われるのはそのためです。
政府の国債費については、現在の国債残高の平均残存期間が約9年あるため、金利上昇の影響が利払い費に即座に反映されるわけではありません。影響が出始めるまでにはまだ時間があるでしょう。
家計への影響は、主に変動型住宅ローンの金利上昇です。変動型の金利は政策金利に連動します。政策金利の引き上げは、長期的には長期金利の抑制に働くため、長期金利の上昇は日銀が引き上げペースを早めるファクターとなります。その結果、間接的にではありますが、住宅ローンを通じて家計に影響を及ぼし得るということです。
Q3 日本マネーの「逆流」が世界の金融市場に与える影響
ロイターなどの報道機関は、長期金利の3%到達によって、既に日本の機関投資家が海外債券から国内債券へ資金を戻す「還流」の兆しを見せていると指摘していますが、これは非常に重要な視点です。
「国内で3%受け取れるなら、為替リスクを負って海外債券を買う必要はない」
と日本の機関投資家が判断し始めると、長年にわたって世界中に向けられてきた日本マネーが国内に還流してくる可能性があります。
特に影響が大きいのは米国債市場です。日本は長年、世界最大級の米国債保有国であり続けてきました。日本の機関投資家が米国債の購入を抑制・縮小し始めれば、米国の長期金利にも上昇圧力がかかります。
為替の観点でも、海外資産から引き揚げられた資金が円転されることで円高要因になります。先ほどの「金利3%→円高→企業収益悪化」という連鎖に、この日本マネーの還流が加わることで、さらに円高が加速するシナリオも考えられます。
長期金利の上昇が単に日本の国内問題ではなく、日本発の世界的な資金フローの変化を起こし得ると、アメリカなどが警戒する要因の一つに、こうした資金の還流があります。
Q4 長期金利が「追い風」と言われる銀行株の未来
一方、「追い風」となるセクターとしてまず挙げられるのが銀行株です。特に日本は金利と銀行株の株価の相関が他国に比べて強いのですが、その理由は大きく2つあります。