「復帰後世代」の象徴としての古謝氏
当初、筆者は古謝氏がここまで圧勝するとは考えていなかった。古謝氏について耳にしてきたのは次のようなことだった。
「玉城デニー知事と比べて知名度がない」
「東大卒、総務省官僚出身だけにエリートっぽくえらそうな感じ」
「話が面白くない」
「年配者を尊敬する沖縄で若い古謝氏は受け入れられない」 などなど……。
かつての保守県政の関係者でさえ、古謝氏について「もう少し育ててから出したかった」とつぶやいていた。
これらの下馬評を覆し、古謝圧勝という結果となった背景には、沖縄社会における世代の大きな変化に目を向ける必要がある。今回の沖縄県知事選は、1972年の沖縄の日本復帰後に生まれた世代が沖縄社会の多数となる中で初めて行われた。沖縄県の住民基本台帳年齢別人口(令和8年)によれば、復帰後に生まれた20歳から54歳までの人口は60万4210人、復帰前に生まれた55歳以上の人口は53万7871人である。このデータには18~19歳が含まれていないことを勘案しても、前回2022年や前々回2018年の知事選では、復帰前生まれが沖縄社会の多数だった(沖縄県ホームページより)。
これまでの調査で、復帰前に生まれた世代のほうが、沖縄戦や米軍統治時代の体験から、「沖縄人」という意識が強く米軍基地にも反対する傾向があるのに対し、復帰後に生まれた世代のほうが「日本人」という意識がより強く米軍基地も容認する傾向があることがわかっている。また、10代から30代を中心に、復帰後世代のほうが「基地反対運動をやっても意味がない」と考える傾向にある(熊本博之・田辺俊介編『復帰50年の沖縄世論』筑摩選書、2025年、中川和明・中山準之助「沖縄の人たちは、本土復帰をどう評価し、今の沖縄をどうみているのか」『放送研究と調査』2022年8月など)。
このような復帰前世代と復帰後世代の傾向の差は、すでに以前から投票行動という形でも表れていた。2025年の参議院選挙や2026年の衆議院選挙でも、10代から50代までの有権者の大多数が自民党候補者を支持する一方、辺野古移設に反対する「オール沖縄」の候補者を60代と70代以上の世代の多数が支持するという構図となっていた。
2026年の沖縄県知事選での投票においても、世代間の支持の違いが明確に現れた。NHKの出口調査によれば、古謝氏は10代から30代の70%以上、40代から50代の60%強の有権者の支持を受ける一方、玉城氏は60代の約50%、70代以上の約60%の有権者の支持を得た。期待する政策については、「景気・物価高」対策が一番で49%だったのに対し、「基地問題」は17%にとどまり、辺野古移設問題については「容認」が53%、「反対」が47%で、「容認」が多数を占めた。これは、2022年の沖縄県知事選における同調査では期待する政策が「経済振興」31%、「基地問題」23%、辺野古移設問題について「容認」43%、「反対」57%だったことからの変化を示している。