脱製造業・少子高齢化社会が抱える問題
新自由主義的な潮流が生んだ社会の歪みという観点からみれば、今回の現象は決してドイツ固有のものではなく、少子高齢化時代の先進国が共通に抱える問題を指し示している。
ザクセン・アンハルト州の小さな町を回っていると、日本の地方が抱えているのと同じ課題を多く抱えていることに気づく。電車が来なくなる、バスが来なくなる、インフラの維持が追い付かない、働き手がいなくなる、商店がどんどん閉まり買い物ができなくなる、病気になっても医者がいない、歯が痛くても歯医者もいない、町の中心部も空き店舗ばかりでゴーストタウンのようである。そこへ外国人が入ってくると、様々な摩擦が起きる。犯罪が増えて治安が悪くなる、町が汚れる、ルールを守らない、などなど。日本の地方に行っても見聞きする話ばかり。人口が減少、高齢化していく産業国の地方が抱える共通の問題である。技術の進歩の恩恵を受けるのは都市部住民ばかりで、地方の住民は昔に比べてどんどん生活が「悪くなっている」と感じ、中央に無視され、忘れられ、放置されているという感覚を抱き、不満が積みあがっていく。
ザクセン・アンハルト州は、人口212万人の小さな州である。ドイツにある16州のうち、平均年齢が最も高く、人口減少率もだんとつで一位であり、一人当たりGDP(域内総生産)はチューリンゲン州と並んで最も低い。今回移動してみても、本来鉄道が通っているはずの路線でバスの代替輸送に変わっていたり、バスが走っているはずでも極端に本数が少なく、しかも時刻通りに来ないということはざらであった。それでなくともドイツ鉄道は近年全く時刻通りに来ないことで有名になってしまったが、それすら来なくなっており、駅舎はピカピカに修復されていても電車は通っていない、というようなちぐはぐな場所もあった。バスや列車の運行を告げるアプリが、本来いつ頃来るかの予測を助けるはずなのだが、これも全く役に立たなかった。たまに開いているカフェやレストランがあると、大概オーナーは中東系かベトナム人だった。ハレでさえ、「ドイツ料理を食べられる店がなくなった」という声を聞いた。確かに、ベルリンの至るところにあるドイツ風のジャガイモと豚肉を山と盛ったような料理を手ごろな値段で出す家庭的な店は、とんと見当たらなかった。
しかし、こんなことは日本でもざらにある。製造業が空洞化し、人口減少と高齢化が追い打ちをかければ、どこもこういう景色になるだろう。ブレグジットを決めた英国もそうだったはずだ。ただ、AfDはそこにチャンスを見出した。何年も前から、丹念に田舎の小さな町や村を回り、人々の苦情に耳を傾け、共感し、「自分たちなら変えて見せる、きっとよくなる」と説いて回った。村に残った数少ないバーやレストランで定期的に会合を開き、村人の生活苦の話しに根気強く耳を傾け、相槌を打った。もともと坂道を滑り落ちるようだった田舎の生活は、経済危機・通貨危機、コロナ、戦争と追い打ちをかけるようにやってくる危機の度により苦しくなっていった。