特集|政治

Vol. 9

永田町は危機管理のガラパゴス 簗農水相辞職で企業が学ぶべきこと

2026年10月19日


<span>永田町は危機管理のガラパゴス  簗農水相辞職で企業が学ぶべきこと</span>

“予算カット発言”が週刊新潮に報道されて約2週間を経た10月14日、簗和生農水大臣(当時)は辞職に追い込まれた。その間、厚顔無恥で極めて不愉快な政治家の姿を、マスメディアを通して国民は繰り返し見せられることに。高市首相の言葉を借りるなら、簗氏の言動は“ダサい”ものだった。全く説得力のない説明を連発した上に、それを二転三転させたのだから。しかし、高市首相の危機管理も、簗氏に負けず劣らず“ダサい”ものだったと言わざるを得ない。それを危機管理の理論に沿って、少し深掘りしてみよう。

 危機管理を行う際の前提は、己の立ち位置を踏まえることだ。企業に置き換えてみると分かる。B to Cの会社の業績は、B to Bの会社よりもイメージに左右されやすい。だから細心の注意を払いながら、迅速な危機対応を行うのだ。たとえば食品会社。商品による健康被害が発生したら、即座に誠実な情報開示をして回収を行う。最近では健康被害がなくても、匂いや見た目の不快感だけでも回収する企業が多い。それほどまでに企業イメージを大切にしているのである。

政界はイメージ産業

 では、政界はB to CなのかB to Bなのか? 言うまでも無くB to Cだ。それは、小池百合子さんの栄枯盛衰を見れば一目瞭然。自らが立ち上げた『都民ファーストの会』によって2017年の東京都議会選挙で圧勝し、次は初の女性総理になるだろうと多くの国民が期待した。しかし、同じ年の衆院選に向けて『希望の党』を立ち上げたが、そこで飛び出したのが小池氏の「排除します」という発言だった。

「民進党からの合流希望者を全て受け入れるのか?」という記者の問いに答えたものだったが、それが“上から目線”と見なされて、好感度が一気に下がってしまったのだ。政界がイメージ産業であることを如実に物語った事例である。

 今回の簗氏による“予算カット発言”への高市首相の対応は、終始後手後手に回っていた。危機管理と言うよりも“遅々管理”と感じる人が多かったに違いない。まるで、政界がイメージ産業であることを忘れているかのような対応だった。誠実な情報開示もなく、大臣のリコールもかたくなに否定し続けたのだから。

 しかし、高市首相は2027年度予算の概算要求において、内閣広報予算を一気に十倍超へと増類した人だから、イメージ産業との認識はあるようだ。が、それは攻めの場面に限られたことで、守りの場面では失念してしまっているとしか思えない。中傷動画の疑惑の時にも、“遅々管理”を行っていたからである。

理論に沿った危機管理とは

 危機管理を失敗する企業の多くは、場あたり的で一貫性に欠けた対応をしている。最初は言い訳や反論をしておきながら、最後には全面降伏に追い込まれてしまうのだ。ジャニーズ、宝塚歌劇団、ビッグモーター、フジテレビなどが好例と言えよう。簗氏と高市首相も全く同じ轍を踏んでいる。では、彼らは何故ダサくなってしまったのか? どのようにして危機管理を進めたら良かったのだろうか? もうこれ以上政治不信を高めて、国民に失望感を与えないために、あえて政界に助言と苦言を呈しておきたい。

 危機管理は4つのステージを確実に踏んで行うと、まず失敗することはないと断言できる。

 第一のステージは“感知”だ。危機を敏感に察知して、事実をくまなく調べて知る。これを高市首相の立場で考えてみよう。簗氏の“予算カット発言”を知ったら、「これは大変な危機だ」と察知しなければならない。なぜなら、「国民の税金に関する問題であり、近年においてマスコミが厳しい追及を続ける公正・公平に関わる事実。しかも、道路という国民の安心・安全を脅かすテーマ」なのだから。その点に、今もって高市首相は気付いていないように思えてならない。選挙区内の有権者へのシャトルバスの無償提供や、選挙スタッフへの報酬の支払いという公職選挙法違反の疑いが出て、そちらのほうを危機と感知している様子だから。

 感知の次なるステージは“解析”。どれほど犯した過ちが罪深いのか、を理解して今後の展開を予測する。それを踏まえて、次の解毒の方針を決める。これを高市首相の立場で考えると次のようになる。

 第一に、簗氏の“予算カット発言”は、大臣の資質はおろか議員あるいは大人としての資質まで疑われるほど重大な過ちである。

 第二に、週刊誌の報道というのは、必ず二の矢・三の矢が準備されている。これまでの芸能人の不倫報道を見れば明確だ。だから、早く辞任しないと新たなスキャンダルが報道されると予測する。

 第三に、高市政権は国民からの好感度(高い支持率)によって支えられている。だから、それを失ったら、自らの政権基盤が揺らぐことになりかねない。

 従って、次のステージである“解毒”の方針は『折れる・闘う・防ぐ・躱す』の中から、『折れる』すなわち最初から真摯な姿勢で謝罪して何らかの罰を発表する、を選択するのが正解ということになる。

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