自ら問いを立て、未知に踏み出す力
AIがこれだけ急速に発達している時代に、人間として必要な力とは何か。長く教育に携わってきた私としては、事実(Fact)、感情(Feeling)、未来(Future)という「3つのF」がカギになると考えています。
「情報」と「事実」は異なります。たとえば、ある研究についてニュースを調べようと生成AIに要約を頼んだとしましょう。AIは「この研究で、〇〇には学力を高める効果があることがわかった」と、もっともらしい答えを返してくれます。
しかし、元の論文にあたってみると、対象は一つの地域の数十人だけで、効果も「一部の生徒に見られた」という程度だったことに気づく。すると事実は、「限られた条件のもとで、効果の可能性が示された段階であり、さらなる検証が必要とされる」というものになります。
このように情報を見極める力、本質がどこにあるのかを見抜く力が、これからより重要になってくるのでしょう。そしてこの土台の上に、何を感じ、どんな未来を描いていけるかは、まさに人間にしかできないことであり、AIに代替されないという意味でより重要になってくるといえるのではないでしょうか。
こうした、真の意味での人間としての成長を重視しているのが、かえつ有明の教育です。
生徒自身の興味や疑問を出発点に、自ら考え、調べ、行動しながら学びを深めていく主体的な教育を実践しています。中学全学年で探究の基礎的なスキルやマインドを身につける「サイエンス科」、それを土台として、自分の関心に基づいた探究を進める高校の「プロジェクト科」というカリキュラムを中心としつつ、あらゆる場面で主体的に考える力が養われるような環境が整えられています。どの科目の授業でもその方針が徹底されていますし、体育祭や文化祭の企画運営、修学旅行のテーマや行き先なども生徒自らが考えて決めます。
いわゆる「探究学習」という言葉で一括りにされてしまうことも多いのですが、そのような教育環境にあるがゆえに、かえつの生徒からは自発的な「こんなことをやりたい」という声が日常的に挙がります。
たとえば、人の集まる機会を増やしたいという2人の提案から、屋上に窯を手づくりし、中1から高3までが関わり合うコミュニティができました。その窯で炭やピザをつくり、新木場エリアの地域活動にもつなげる取り組みは長く続く事業になっています。ピザといえば、北海道への修学旅行に私も同行した際、とある生徒と小麦の自給率の話になったことがきっかけで、国産小麦を仕入れてピザをつくるというプロジェクトに発展したこともありました。
夜の東雲駅周辺を明るくして盛り上げたいという提案が生徒から挙がったこともあります。学内に収まらない話であり、費用や安全面の課題などを伝えると、さすがに諦めるかと思いきや、自分たちで町内会長に相談し、なんと鉄道会社や自治体などの協力を得られることに。駅に「入学おめでとう」「就職おめでとう」などといったお祝いのイルミネーションが設置され、地域の話題になりました。
このように生徒があらゆることに興味を持ち、課題解決に繋がるような取り組みを自発的に行っているのです。学内に巣箱を設置してはちみつを収集したり、コンクリートに囲まれた廊下の壁に地元企業から提供してもらった木材を設置して明るい雰囲気に変えてみたり、木材の保管のための小屋を自作するプロジェクトをきっかけに建築に興味を持ち、ヨーロッパの石材建築を学び始めたり。どれもこれも生徒自らの発案で実現したことです。
単なる「探究」ではなく、こうした自ら問いを立て、未知に踏み出す力こそ、不確実な時代を生き抜くための知のレジリエンスだと我々は考えています。もちろん、学力テストなどで測る「認知能力」を軽視しているわけではありません。好奇心や主体性などの「非認知能力」が育つことが、知識を深め、学力を高めることにもつながるという考えです。