政治

ジョコ・インドネシア大統領が狙う「一族支配」、布石は着々でも存在する高いハードル

2024年4月3日


<span>ジョコ・インドネシア大統領が狙う「一族支配」、布石は着々でも存在する高いハードル</span>

「スハルト家」は民主化によって権力を失った。「スカルノ家」は民主化によって復活したが、メガワティの後は有力な政治家を出していない。「ユドヨノ家」も、息子たちに父親ほどの政治力はない。インドネシアの有力政治家一族は、フィリピンにおける大土地所有のような社会経済的資源を持たない場合が大半だ。ゆえに、政治権力を手にした途端に汚職に走る一方で、カネだけでは勝てない民主化後の社会で権力維持は容易でない。長男を次期政権の副大統領に据えるなど「ジョコウィ王朝」に布石を打つジョコ氏も、大統領の座という「公的資源」を失えば同様の逆風に晒される。

 2月14日に行われたインドネシアの大統領選では、プラボウォ・スビアント国防相とギブラン・ラカブミン・ラカの正副大統領候補が勝利を収めた。3月20日に選管から発表された開票結果では、プラボウォ=ギブラン組が58.6%を得票し、他の2候補を大きく引き離して圧勝した。

 プラボウォ国防相は、1998年の民主化以前、スハルト大統領による強権体制の下で国軍将校として台頭し、スハルトの次女とも結婚したことから、一時はスハルトの後継者と見なされた人物である。陸軍エリート部隊を率いていた際に分離独立運動や民主化運動の活動家を弾圧したという人権侵害の疑惑もあるため、大統領就任後にどのように政権を運営するのか注目されている(この点については2024年3月5日付『日本経済新聞』の「経済教室」の記事を参照していただきたい)。

 しかし、ここでは副大統領になるギブランに注目する。今回の大統領選でプラボウォが圧勝した要因は、政権末期になっても人気の高い現職の大統領ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)の支持者の票を獲得することと、有権者の過半数を占める40歳以下の若い世代の支持を得ることの両方に成功したところにある。この2つの選挙戦略においては、「ジョコウィ大統領の長男」というラベルを持ち、「30代の若い政治家」としてアピール力のあるギブランを副大統領候補に選んだことが非常に効果的であった(この点については、拙稿「なぜプラボウォは圧勝できたのか?――2024年大統領選挙を開票速報から分析する」『IDEスクエア』2024年3月の記事を参照していただきたい)。

 一方で、ギブランが擁立されるに至った背景を、単にプラボウォ陣営の選挙戦略だけで説明することはできない。父親であるジョコウィには、大統領引退後も政治的影響力を保持し、首都移転などの肝いり政策を次の政権に継承させたいという思惑があった。そのためにジョコウィは、ギブランの立候補と当選を実現しようと、一族を動員した政治を展開した。一部の識者や市民運動家からは、「ジョコウィ王朝」を確立しようとする動きだと強い批判が巻き起こった。……

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