強引な国会運営で、内閣支持率は大幅に下落
高市首相が頼みの綱とする内閣支持率に異変が起きている。毎日新聞が7月18、19の両日に実施した調査では、前回から10ポイント減の41%へ大幅に下落。テレビ朝日の調査でも政権発足以来、はじめて5割を切る49・2%と過去最低を更新した。直近の強引な国会運営が支持率下落を引き起こしたのは間違いない。
首相本人は7月17日、参院予算委員会で自身が“国会混乱の要因”と指摘され、
「私自身は国会に呼ばれたら来て誠実に答弁をする、これに尽きます」
と、強弁したが、
「まさに首相こそ、空転国会を招いた張本人です」
とは政治部デスク。
「この間、高市首相は野党から中傷動画問題で追及を受けてきました。しかし6月下旬、首相は自身が答弁する代わりに動画の投稿に関わったとされる公設秘書の陳述書を提出すると表明。野党は首相の国会軽視が甚だしいと態度を硬化させ、衆参予算委員会での集中審議や党首討論を求めました。また、法案審議に関する新たな日程協議にも応じなくなったのです」
こうして国会をストップさせながら、首相はギリギリまですべての法案の成立を目指していた。
「とりわけ首相がこだわったのが、定数削減法案と副首都関連法案です。両法案とも今国会での成立を目論んでいました」(同)
定数削減法案は衆院議員の定数見直しを目的とするもので、法施行から1年以内に与野党協議で結論が得られなければ比例代表の議席を「自動的に削減する」との規定を盛り込んでいる。日本維新の会が掲げる「身を切る改革」に沿った形の法案だ。
一方、副首都関連法案は、首都機能の一部を地方へ移転する「副首都構想」の実現に向けた法整備で、こちらも維新の悲願である「大阪都構想」を後押しする狙いがある。
「昨年秋、首相が公明党の連立離脱で窮地に陥った際、九死に一生を得たのは維新が“連立入りを決断してくれた”からです。だから首相は彼らに義理立てすべく、維新が最重要政策と位置付ける定数削減法案と副首都関連法案については、土壇場で『60日ルール』を用いることも辞さない姿勢でした」(同)
憲法59条が規定する「60日ルール」は、衆院を通過した法案が参院に回ってから「60日経っても議決されない」場合は「参院が否決した」ものとみなし、再び衆院に戻して出席議員の3分の2以上の賛成で再可決されれば「法案成立」とする仕組みだ。
「自民は先の総選挙で大勝し、衆院で3分の2以上の勢力がある。首相は“参院で法案の審議が止まっても『60日ルール』を使って衆院で再可決したらいい”という認識でした。数の力で野党を押し切れるとタカを括っていたのです」(同)
首相の意向を受けて与党は6月26日の衆院議運委で、定数削減法案と副首都関連法案の審議入りを提案した。野党は反対したものの、自民の山口俊一議運委員長が職権を発動。両法案は特別委員会に付託され、野党の反対を押し切る形で審議入りした。
「結果、野党がすべての法案について、衆参での審議を完全にボイコットする事態に発展しました。しかも、その時点では皇室典範改正法案は審議入りすらしていませんでした」(同)
首相外遊中に動いた森英介衆院議長
皇室典範改正法案は減少する皇族数の確保を目的として、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる制度の導入と、旧宮家の男系男子を養子に迎える規定の整備を柱とする。ここで登場するのが“政権の生みの親”たる麻生太郎党副総裁で、
「実妹が三笠宮寬仁親王妃信子さまです。つまり皇族の外戚にあたる麻生氏には、皇室の安定的な存続に関して強い思いがあるとされる。その麻生氏も現在85歳。引退の2文字もチラつくなかで“今国会中に何としても皇室典範改正を見届けたい”との想いが強かったといわれています」(同)
そうした意向を汲んで動いたのが麻生氏の腹心、森英介衆院議長だった。7月1日、自民党の鈴木俊一、中道改革連合の階猛両幹事長ら与野党7党の幹部を国会内に招集。皇室典範改正法案について「速やかに成立するよう最優先で取り組んでもらいたい」と要請したのである。
「森氏が『議長あっせん』を行った1日は首相がインド訪問に旅立った日でした。首相が外遊で日本を離れた3日間で、森氏は同じ麻生派の山口議運委員長とともに“皇室典範改正法案を優先させる”との流れを一気に作りました」(同)
この動きは官邸にとって寝耳に水だった。
「首相はすべての法案の成立にこだわりながら、現場で国会対策を担う自民の衆参国対幹部の進言にほとんど耳を貸そうとしませんでした。ある幹部は番記者らに携帯電話の画面を見せながら“首相が電話に出てくれない”と嘆いていた。首相は集中審議や党首討論への出席を促されるのを避けたかったのでしょう。国会運営は完全に行き詰まりました。首相にとって森氏の『あっせん』は“余計なお世話”で強い不快感を示したようですが、国対の現場にとってむしろ渡りに船だったのです」(同)
1日の「あっせん」を受け、木原稔官房長官と維新の遠藤敬首相補佐官は断続的に協議を重ねた。
「両者の協議で、皇室典範改正案の審議を最優先とし、副首都関連法案は“成立を目指す”一方、定数削減法案は“先送りする”という基本方針が固まった。こうした地ならしを経て、7日には首相と維新の吉村洋文代表が国会内で会談。定数削減法案については今国会での成立を見送る方針を確認したのです」(同)
維新幹部は不満顔だ。