インド側カシミール地方で起きたテロによって一時「戦争状態」に発展したインド・パキスタンの対立は、ドナルド・トランプ米大統領の「仲介」という形で一転収束したが、インドは背後にパキスタン政府や軍統合情報局(ISI)の関与があると非難している。パキスタン側はこれを否定するが、過去のテロは多くがパキスタンに拠点を置くイスラム過激派の仕業と、ほぼ断定されている。
1970~80年代、ソ連によるアフガニスタン侵攻に際し、ジハード(イスラム聖戦)に身を投じたパキスタン人義勇兵をパキスタン政府が支援したことは公然の事実だ。同国のハワジャ・アシフ国防相は4月末、英ニュース局のインタビューで「我々は30年間にわたって米英の代理でテロリストに訓練や資金援助を与えた」と認めている。
現在でもパキスタン政府や軍がテロリストを支援しているという確証はないが、通常戦力ではインドに劣るパキスタン軍が過激派を利用しているとの指摘を完全に否定するのは難しい。軍内部に対インド強硬派が少なくないうえ、国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンがパキスタン軍基地の間近に潜伏していた事実もある。国内にいる過激派の存在を「知らない」では済まない。「過激派は傘下のモスク(イスラム礼拝堂)や神学校などを通じて慈善活動を行う」(パキスタン人ジャーナリスト)ため、住民がシンパシーを持ちやすいという部分もあるようだ。
ただ、今回のカシミール地方でのテロには“例外要素”もある。これまでの越境テロの多くは印パ関係が改善に向かう局面で起きているが、今回はインドによる2019年のカシミール「併合」などで印パ関係が極度に悪化した中で起きているのだ。……