医療・ウェルネス

「GLP-1受容体作動薬」をただの「痩せ薬」と蔑むなかれ――日本メディアが見過ごす医療と産業の大変化

2025年9月8日


<span>「GLP-1受容体作動薬」をただの「痩せ薬」と蔑むなかれ――日本メディアが見過ごす医療と産業の大変化</span>
GLP-1薬の研究開発は、いまや医療政策と産業戦略の両面で注視すべきテーマだ (C)K KStock/stock.adobe.com

日本ではGLP-1受容体作動薬を害の多い「痩せ薬」として扱う報道が続いている。「肥満は病気」と喧伝するウラの営利主義と、「痩せねばならない」という社会的圧力の高まりには、確かに注意が必要だ。しかし、肝臓疾患や片頭痛、男性更年期障害などへの有効性も期待されるこの薬を、蔑んで済ますべきではない。ノボ・ノルディスクとイーライ・リリーが鎬を削る開発競争の中、単に治療法の革新にとどまらず、国際的な医薬品の需給構造や供給体制そのものを揺るがす変化の可能性が生まれている。

 GLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1薬)の濫用が社会問題化している。8月3日放送のフジテレビ『Mr.サンデー』は、この問題を特集し、手軽に痩せたいと考える若者が、米製薬大手イーライ・リリー(以下、リリー)の販売するGLP-1薬チルゼパチド(商品名マンジャロ)を不適切に使用している実態を報じた。番組では「3カ月で13キロ減」といった極端な減量例が紹介され、さらに「栄養不足は仕方ない」と語る若者の姿勢を取り上げ、安全性への懸念を強調した。

 続いて、8月20日には、FNNプライムオンラインも「もはや貧困国レベルに…世界も驚く低体重の日本人女性」と題したニュースを配信し、GLP-1薬を用いた過度なダイエットの危険性を改めて警告した。

 こうした報道の影響もあってか、ネット上では「若い女性が本来は病気治療薬であるマンジャロを使って無理に痩せようとしている」などの記事やブログが散見される。結果として、GLP-1薬を適正使用することで得られる医学的メリットよりも、「痩せ薬」としての負の側面が強調され、日本でのGLP-1薬批判が高まっている。

 この状況について、米国ボストン在住の大西睦子医師は、「日本の報道はバランスを欠き、ネガティブキャンペーンのように映ります」と言う。日本と同様に、米国でもGLP-1薬の使用を巡って社会的な議論が巻き起こっているが、その様相は大きく異なっている。……

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