医療・ウェルネス

もう始まっている「遺伝子編集でスーパーマンをつくれる時代」に備えよ

2025年10月16日

ノーベル化学賞を受賞したCRISPR-Cas9などの遺伝子編集技術は現在、臨床医学にも応用されつつある。費用の壁を乗り越えられれば、人類を苦しめてきた遺伝性疾患の根本的治療に道が開ける。だが一方、遺伝子編集には倫理的な問題と軍事転用への危険性がつきまとう。このAIと並ぶ国際競争の最前線を日本の政治は見ているのか。

 『ネイチャー』9月5日号に掲載された「CRISPRで改変された馬が初登場 ── 遺伝子編集動物の未来とその論争」という論考が興味深かった。これを読むと、世界で遺伝子編集技術の実用化が加速していることが分かる。日本のメディアを追っているだけでは触れることがない現実だ。

「筋力・スピードを強化した馬」「暑さに耐性を持つ牛」「肉が低アレルゲンの豚」

 この論考では、CRISPR-Cas9技術を用いて誕生した「遺伝子編集馬」に注目していた。開発したのはアルゼンチンの非営利研究機関Kheiron Biotechで、ポロ競技の名馬「Polo Pureza」のクローン胚に、ミオスタチン遺伝子(筋肉の成長に影響する遺伝子)の調整を加え、筋力とスピードを強化した。誕生から10カ月が経過し、順調に成長しているそうだ。

 ポロ競技は、馬に乗って球を打ち合うチームスポーツだ。古代ペルシャで生まれ、英米、インド、パキスタン、さらにアルゼンチンで盛んだ。アルゼンチンらしい研究である。

 アルゼンチンでは、この馬を巡って、議論が盛り上がっている。当然かもしれないが、アルゼンチンポロ協会は競技での使用を禁止した。これは国際馬術連盟のガイドラインに準じた対応であり、「科学がスポーツの本質を壊す」とする伝統派ブリーダーからの反発を考慮したものだ。一方で、研究者たちは「CRISPRを馬に応用した点は科学的に画期的」と評価し、議論は分かれている。現在は、制限派が多数を占めるが、将来的にどうなるか分からない。……

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