政治

EUによる対ウクライナ融資合意を読むーー「EUらしさ」の解剖

2026年1月8日

EUは2025年12月の首脳会合で、ウクライナに対する900億ユーロの無利子融資を決定した。交渉の過程では、当初案がベルギーの反対で頓挫し、最終合意にはハンガリー、スロヴァキア、チェコが加わらなかった。この経緯をもってEUの「分裂」を強調する声も少なくない。しかし、制度と意思決定の構造に目を向ければ、「EUらしさ」ともいえる粘り腰が浮かびあがる。ただし、その先に深刻な課題が潜むのもEUだ。

 EU(欧州連合)は、2025年12月18日にブリュッセルで開催した欧州理事会(EU首脳会合)で、2026、27年の2年間に合計で900億ユーロ(約16兆円)の無利子融資をウクライナに対して実施する合意に達した。当初目指されたロシア中央銀行の凍結資産を活用する案は頓挫し、かわりにEU予算を担保とする案が承認されたのである。

 凍結資産の活用の是非やその方法に注目が集まったために、EUは分裂を露呈することになった。一部報道でも、融資が合意されたことよりも、凍結資産活用案が断念されたことの方が強調されていた。しかし、ウクライナ支援の継続の観点で今回の融資合意は極めて重要だし、合意された枠組みは、多くの点で当初の凍結資産活用案と共通していることも注目に値する。

 そして、今回の融資の仕組みとそこに至る過程には、良くも悪くも多くの「EUらしさ」が存在する。EUの決定の中身とその意味を解剖することにしたい。

上昇した緊急性

 まずは外形的な部分である。12月18日の首脳会合は、はかり方にもよるが15時間から17時間続き、終了したのは、日付が変わった19日の午前3時頃で、アントニオ・コスタ欧州理事会議長による記者会見が始まったのは同3時半をまわっていた。日本の総理が参加する首脳会合では考えにくいかもしれないが、EUにとって、これは必ずしも珍しいことではない。予算交渉など、どうしてもその時に合意しなければならない案件があれば、完全な徹夜もおこなわれるし、翌日やその次の日まで延長されることもある。何とも「EUらしい」やり方だ。……

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