教育

教育史上、三度目の正直で「待ったなし」 都市部で進む「部活動地域展開」の“期待と不安”

2026年6月5日


<span>教育史上、三度目の正直で「待ったなし」 都市部で進む「部活動地域展開」の“期待と不安”</span>
部活動の地域展開は都市部でも進む 写真:Nomad_Soul/shutterstock.com

 各自治体ではいま、部活動の地域展開が進む。スポーツ庁がここ数年で、休日の部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行を進めてきたからだ。今年度から令和13年度にかけては「改革実行期間」と定め、さらに地域展開を活発化させる予定だ。特に休日については、この期間内にすべての学校部活動で実現するという。「地域展開」は何も地方ばかりではなく都市部でも進む。東京都江東区は都内でも先進的な取り組みをしている自治体のひとつで、令和7年度には区内の公立学校各1部活で地域展開を実施している。ここまでの3年間で、取り組みはどこまで進んだのか。江東区立辰巳中で地域展開を行う卓球クラブを現地取材した。

江東区でも進む部活動の地域展開

 土曜日、朝8時半。江東区立辰巳中の卓球クラブの生徒たちは校舎のホールに台を並べ、基礎トレーニングを始めた。卓球クラブに立ち会うのは、外部指導者の女性だ。子育ても一段落したこの女性のもとに、指導者の依頼があったのは昨年のこと。高校まで卓球の選手だった女性は、顧問の教員が作り上げた練習メニューを踏まえつつ、基礎技術を中心に指導しているという。女性はこう意気込む。

「技術の高いクラブチームとは違いますが、地区大会で勝つために基礎力は高めたい。勝った方が、楽しさもわかってくるんですよね。日々の活動ではちょっとした技術のアドバイスをして、叱る時はしっかり叱ります」

 とはいえ、突然やってきた外部の指導者に戸惑いはないのだろうか。クラブの主将を務める生徒に聞くと、「顧問の先生は忙しい。土曜日は基本的にコーチ(外部指導者)が来てくれるようになったので、サーブの出し方とかわからないことを気軽に聞きやすくなりました」と好意的だ。

 江東区は、2025年10月から全中学校・義務教育学校(後期課程)の、1校につき1部活の休日活動分を地域クラブ活動として展開。外部指導者を派遣する取り組みを試行している。辰巳中の卓球部では、平日は顧問の教員が、休日は外部指導者がメインとなって別々に指導を行う。顧問と外部指導者のディスコミュニケーションを防ぐためにも、ウェブ連絡システムを導入し、その日の練習の様子や指導内容の共有が行われているのだという。

 スポーツ庁は、生徒がスポーツ活動を継続できる機会を確保するため、令和5年度から7年度までを「改革推進期間」と位置付け、休日の部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行を進めてきた。辰巳中のある江東区も、令和5年度より地域展開を進める自治体のひとつだ。

頓挫した過去2回の地域移行

 実は部活動を学校から地域へ移す試みは、過去に2度行われている。一度目は1960~70年代、教師の長時間労働が社会問題化したことから部活動を地域に移す構想が生まれた。しかし、地域側の受け皿不足などにより定着せず頓挫してしまった。

 次に機運が高まったのが、1990年代後半〜2000年代初頭にかけてだ。当時の「ゆとり教育」政策の中で、学校外のスポーツ環境整備が重視され、地域スポーツクラブと部活動との連携が模索された。だがここでもクラブの数や指導者・財源が不足し、地域移行は再び失敗に終わった。そして三度目の、部活動を地域展開する波が押し寄せている。

 文科省によると、令和6年度は全国510市区町村で地域クラブ活動への移行に向けた実証事業が実施されている。中には、必要資金をクラウドファンディングで獲得したり、平日の合同部活動や休日の地域クラブ活動にスクールバスを活用するなど、ユニークな取り組みを行う自治体も出てきている。足りない人員は、かつて地域クラブ活動の前身の活動に参加していた学生や指導者が担う例もあるようだ。

 いずれにしても、地域クラブ活動の実施・運営には、家庭の自己負担や行政・関係団体の自主財源からの支出、企業からの寄附などの組み合わせによる財源のもと、持続的な活動を前提とした仕組みの構築が必要だ。

 この地域展開の波にあって、前出の江東区ではどのような取り組みを行ってきたのか。

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