国家安全保障局設置につながったアルジェリア邦人人質事件
政治でもビジネスでも、チームを機能させることはリーダーの最優先事項ですが、それゆえに組織づくりや組織運営に悩む人は多いようです。7年8カ月続いた安倍政権で官房長官を務め、その後総理を務めた私の経験が、こうした悩みを解決するヒントになるのではないか。そう考えて、これまでも意思決定に関する過程をインタビューや自著『菅義偉 官邸の決断』(ダイヤモンド社)などで明かしてきました。
中でも、官僚組織の縦割りや前例踏襲主義の問題にはこだわってきました。繰り返し「縦割り打破」「前例踏襲主義打破」を明言してきたのはこのためですが、組織がセクションや部署の壁、あるいは前例の壁に阻まれて機能的に動けなくなっているという事例は、官民を問わずあらゆる組織に共通する問題ではないかと思います。
こうした問題に直面したのが、第2次安倍政権発足からわずか3週間後の2013年1月16日に発生したアルジェリアでの邦人人質事件でした。アルジェリアでエネルギー事業に取り組む日揮の社員らが人質となり、10名が死亡するという痛ましい事件が起きたのです。
発生当時、安倍総理は東南アジア歴訪中で日本におられなかったことから、官房長官として留守を預かっていた私が前面に出て対応することになりました。もちろん、安倍総理とは逐一、連絡を取っていましたが、総理不在の中で現場での判断を下さなければならない、初めて直面した大きな危機管理でした。何よりも国民の命がかかった重大事件です。生存者全員を守り、無事帰国させなければならない。国民を守ることが第一で、それ以上でもそれ以下でもないという緊張感がありました。そうした思いを官邸スタッフとも共有し、事にあたろうと考えたのです。
状況は逐一報告を受けていましたが、各省庁が持っている情報が役所ごとに違っていたのです。これには驚きました。省庁の縦割りの発想から抜け出せないために、各省庁はお互いの情報をすり合わせることができず、バラバラに上がってきたものをそのまま私に報告していたのです。