連載|Foresight

Vol. 32

【ウクライナ讃歌|第6部】 子どもたちの世界(3) 少女たちは自由を選んだ

2026年8月12日


<span>【ウクライナ讃歌|第6部】 子どもたちの世界(3) 少女たちは自由を選んだ</span>
キーウに脱出したオレーナ(右)とナディア。「セーブ・ウクライナ」のリハビリセンターで暮らしている(筆者撮影)

クリミアに生まれた18歳のオレーナとナディアにとって、2014年のロシアによる占領以前の記憶は多くない。学校に入った時から軍事訓練とロシア愛国教育が行われ、やがてウクライナ語を口にすることも禁じられた。ロシア人の子や教師からのいじめがあり、親たちとも心の溝で隔てられた。2022年の全面侵攻をきっかけに「私はウクライナ人なのに」との意識が芽生えたとナディアは言う。戦争が子どもの心と家庭を痛めつけ、占領地では連れ去りやロシア人家庭との強制的な養子縁組も多発している。子どもたちの奪還運動を続ける「セーブ・ウクライナ」に救出されリハビリ中の2人の少女にインタビューした。

 ロシアは現在、ウクライナの国土の約2割を占領しているが、当地での人権状況に大きな懸念が抱かれている。脱出してきた住民らの証言などから、拘束や拉致、拷問、恣意的な裁判などによる恐怖政治が敷かれていると推測できる。

 特に問題なのは、未成年者を取り巻く状況である。保護者から引き離されたり、連れ去られたり、ロシア人家庭との養子縁組をさせられたりといった例は、様々な証言や報告が示している。多くの子どもたちが軍事訓練や愛国教育のためにキャンプに送られ、その場所が遠く千島列島や北朝鮮にまで及ぶのは、2025年10月14日付『「殺人マシン」に訓練されるウクライナ占領地の子どもたち:施設は千島列島「占守島」にも』、2026年4月22日付『北朝鮮に連れて行かれるウクライナの子どもたち:巨大エネルギー企業の協力も』で報告した通りである。

 状況を憂慮するウクライナの大手慈善基金「セーブ・ウクライナ」は、政府や国際機関の支援を受けつつ、危機にさらされる子どもたちの奪還運動を続けている。今回、そのプロジェクトによって救出され、キーウでリハビリ中の2人の少女に、話をうかがう機会があった。彼女たちの体験と、現地の子どもたちが置かれた環境について報告したい。

占領地から逃れた少女たち

 キーウから郊外に車で向かうと、市域を外れるあたりから、中小企業の事務所や町工場のような低層の建物が並ぶようになる。その1棟が「セーブ・ウクライナ」によって運営されるリハビリ・センターである。占領地から脱出してきた未成年者は、ここで精神面でのケアを受け、ウクライナ社会への適応法を身につける。

おすすめの記事

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

注目の特集

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの電子書籍

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの動画

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

ニュースレターを購読する

新潮QUEは、「問う力」を養っていくためのサブスクリプションサービスです。

無料登録する