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ホルムズ海峡「迂回パイプライン」はどこまで頼れる発想か――輸送能力に加えて考えるべき地政学ファクター

2026年8月13日


<span>ホルムズ海峡「迂回パイプライン」はどこまで頼れる発想か――輸送能力に加えて考えるべき地政学ファクター</span>
中東では情勢に応じて敵・味方関係が頻繁に入れ替わってきた[2026年3月4日、イラク・バスラ近郊のルメイラ油田](C)REUTERS/Essam Al-Sudani

海峡封鎖で注目された原油パイプラインによる迂回輸出には、まず能力の限界が存在する。では、その限界を克服しようと打ち出される新たなパイプライン構想は、どこまで有効な対処だろうか。もちろん無意味なものとは言えないが、イランは輸送設備へと攻撃対象を移すだろう。そして、敷設国間の力関係と利益配分を左右するというパイプライン特有の性質は、中東に別の地政学問題を生み出しかねない。

 イラン戦争に伴うホルムズ海峡の実質的な封鎖が始まって5カ月になる。情勢は流動的で、戦争、停戦合意、緊張緩和、覚書署名、衝突の再発、再度の緊張緩和と、事態は急展開を繰り返してきたが、多くの専門家が指摘してきた通りホルムズ海峡における民間船舶の航行の正常化にはまだ時間を要する見込みだ

 ホルムズ海峡がチョークポイントとして戦略的重要性を高めているのは、海峡の奥にあるペルシャ湾岸地域に油田が集中していることが主な理由である。短期的な原油・石油製品不足に対して代替調達を模索することも重要だが、世界の原油生産量の約2割を占める湾岸地域の原油約2000万バレル/日(bpd)が市場に安定的なかたちで戻って来ない限り、世界的なエネルギー供給不足と油価高騰の影響からは誰も逃れられないだろう。2月の開戦前のWTI原油先物価格は1バレル60ドル前後を推移していたが、8月現在は80ドル前後で動いており、供給体制への不安は解消されていない。

 輸出国である湾岸産油国にとっても、イランによる海峡封鎖リスクが現実化したことで、これに対する中長期的な対処法を見出すことが求められている。その方策の一つとして、ホルムズ海峡を迂回する輸出ルートの確保が検討されており、新たな原油パイプラインの建設構想が各国で活性化している。

相次ぐパイプライン建設構想

 湾岸産油国が保有する既存の原油パイプラインには、ペルシャ湾から紅海へと抜けるサウジアラビアの東西パイプライン(輸送能力700万bpd)、ペルシャ湾からオマーン湾へと抜けるUAE(アラブ首長国連邦)のハブシャン・フジャイラ・パイプライン(同150万-180万bpd)、イラク内陸のキルクークから地中海に面するトルコのジェイハンに抜けるイラク・トルコ・パイプライン(同140万-160万bpd)が存在する(下図参照)。

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