<span>「差別のない本屋」を目指すために取るべき行動は「ヘイト本」排除ではない</span>
写真:gary yim/shutterstock.com

差別や分断を許さない。その正義の思いが別種の差別、分断を生む危険はないのだろうか。朝日新聞が記事にしたことで最近話題になった「反ヘイト」運動の旗手による主張の危うさを、「ヘイト雑誌」と批判された雑誌での編集者経験を持つライターの梶原麻衣子氏が解説する。

「差別のない本屋に通いたい」という運動

 朝日新聞読書欄(8月8 日付)に掲載された「ヘイト本を書店の目立つところに置くな」との運動をしている仲川啓介氏の著書『差別のない本屋に通いたい。――本好き教師の冒険の記録』(キボウ書房)の著者インタビュー記事に、SNSを中心に非難の声が殺到した。

 都内で小学校教諭をしている仲川氏は、書店に「ヘイト本」が並ぶ状況を憂い、店員に「平積み」をやめてはどうか、と「震える声」で話しかけた。しかし状況は変わらなかったため、ネットでの署名活動を開始する。こうしたアクションで社会を変えたいと考えている。そんな仲川氏の思いを綴った本の紹介記事である。

 当然ながら、批判が起きるのはヘイトに賛同している人たちが多いからではない。ある人が不快だとか、差別だと感じる、という理由だけで特定の書籍を書店から排除することになれば、他のあらゆるジャンルの書籍が対象になりかねないとの懸念から、いわば言論の自由、表現の自由を脅かすものと捉えられたためだ。

 この現象は中韓に批判的な態度をとる保守化の表れではなく、仲川氏自身の運動の展開方法に対する疑問に加え、「言論の自由は最大限保障されるべき」という権利意識の高まりであり、「特定の意見の書籍の排除につながる行動を警戒する」、いわば「リベラル化」が進んだ結果とも言える。

 さらには仲川氏が放射能被害を科学的知見以上に恐れる姿勢を許容し、福島原発地域の放射能被害を過大に煽るような書籍等を薦めていると思しき模様などが発掘されたことで、「人種や国籍を理由にするヘイトには厳しい一方で、放射能差別を広めている」との姿勢がダブルスタンダードであると指摘されることにもなった。

「ヘイト雑誌」をめぐる変化

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