高市首相と安倍元首相
――これまでの高市早苗首相の仕事ぶりをどう評価されていますか。
ワインスタイン 防衛・安全保障の面で非常に力強いスタートを切ったと思います。防衛費を対GDP比2%の水準まで引き上げましたし、内閣情報調査室を母体として新たな情報機関(国家情報局)を創設しました。これらは日本の将来にとって明るい兆しとなる、極めて大きな一歩です。改定された「自由で開かれたインド太平洋戦略」を発表するなどして、この地域における同盟国やパートナー国との連携を重視していますが、これも非常に重要なことです。
同時に、彼女は世界のリーダーとしても存在感を高めています。トランプ大統領と強固な関係を築いており、私の見る限り、世界のどの指導者よりもトランプ大統領と親密な関係にあります。欧州でも、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相やイタリアのジョルジャ・メローニ首相らと強固な関係を構築しました。
そして、女性CEOや女性の取締役が極めて少ない日本で、女性がリーダーシップを発揮できることを示したことも大きいです。マーガレット・サッチャーは「女性リーダー」というよりは「保守派のリーダー」として見られていたわけですが、高市首相はその両方として認識されている点は重要だと思います。
――この夏にかけて高市政権の支持率が急落したことについて、どうお考えですか。
ワインスタイン 支持率が70%台という極めて高い水準から低下するのは、ごく自然なことです。それよりも重要なのは、中国側が「台湾有事」に関する高市首相の国会答弁を、首相の人気を失墜させるための「てこ」として利用しようとしたものの、それが完全に裏目に出たという点です。中国側は日本への観光制限や日本産水産物の輸入停止、その他の強硬手段によって日本経済を減速させようと考えたのでしょうが、結果としてそれらの動きは首相の人気を損なうどころか、むしろ高めることになりました。そうした点から、私は彼女を「強いリーダー」だと見ているのです。対話の用意はあるものの、毅然とした態度で、譲れない一線では断固として引かない。非常に良いリーダーだと思います。
――高市首相は、特に憲法改正などの問題において、故・安倍元首相の路線を継承しようとしています。彼女の手腕を安倍氏と比較するとどうでしょうか。
ワインスタイン 高市首相は、公明党が連立政権から離脱したという点において、ある意味で恵まれた状況にあります。安倍氏は、公明党を満足させ連立にとどめつつ、自民党内の議員とも連携していくという、非常に難しい舵取りを迫られていました。一方、現在は状況が大きく変わり、高市首相は日本維新の会を連立パートナーに迎えることで、そうした制約から解放されました。維新は次期内閣改造で閣僚ポストを獲得することになるでしょう。それによって、彼女は安倍氏が実現できなかったような政策を実行できる立場にあります。
とはいえ、彼女は間違いなく安倍氏の路線を継承しています。安倍氏は、「自由で開かれたインド太平洋」という構想を打ち出す戦略的な先見性と直感を持っていました。後継者が進むべきロードマップを描いたのも彼であり、彼女はその恩恵を受けているのです。時代背景が全く異なりますから、両者の手腕を単純に比較するのは難しいですが、安倍氏が描いたロードマップの上で、彼女が素晴らしいスタートを切ったことは確かです。