「今や我々は皆、社会主義者」。金融危機さなかの2009年2月、ニューズウィーク誌はカバーにこう掲げた。あれから17年。同誌10月23日号の表紙は「アメリカ社会主義共和国」。ゾーラン・マムダニ・ニューヨーク市長、バーニー・サンダース上院議員ら民主社会主義の旗手たちが、赤旗の下、人民服姿で自転車を漕いでいる。
ホワイトハウスはこの企画を社会主義「美化」の組織的運動だと非難した。中間選挙が目前に迫り、民主党内で存在感を増す左派への政権の攻撃は激しさを増す。大統領経済諮問委員会(CEA)は10月、民主社会主義者たちの掲げる政策を実行すれば10年で49兆ドルの財政負担とのレポートを公表した。
左右の垣根を超える「AIの富を国民に配れ」
サンダース氏が照準を合わせるのはAIの生む富だ。同氏が6月に提出した法案は、AI関連の年間売上高が2億ドル以上の企業に株式の50%を国へ納めさせ、約7兆ドルの政府系ファンドを創設して国民に配当する構想だ。だが、実は民主社会主義者を批判するホワイトハウスの主も、ここではサンダース氏に近い発想を持つ。ドナルド・トランプ大統領は同月、政府がオープンAIやアンソロピックなどの株式を直接持つ可能性に触れ、AI企業を「この革命のパートナーにする。素晴らしいことだ」と記者団に語った。
AIの富を国民に配れ――左右の垣根を超えて広がるこの要求に、AIで富を築く側も答えている。オープンAIは2025年10月の組織再編で、非営利の財団に約1,300億ドル相当の株式を付与した。アンソロピックはこの10月18日、自社株の5%を新設の公益基金に拠出すると発表、これは5月の評価額で換算すると約480億ドルに上る。同社は創業者らの寄付の誓約と合わせ、株式の約20%を「公共の利益」に振り向けるとしている。スペースXのイーロン・マスクCEOもXで呼応し、翌19日、来年に全米の子どもへ自身のスペースX株を1株ずつ贈ると表明した。18歳未満の約7,200万人を対象とするニューズウィーク誌の試算では、総額は約105億ドルに上る【チャート1】。