連載|Foresight

Vol. 78

トランプ大統領の発言とアクション(10月8日~10月22日):中間選挙前夜の「アメリカ社会主義共和国」で株式を恵むAI長者、戦費の財布を誰が握るか

2026年10月24日


<span>トランプ大統領の発言とアクション(10月8日~10月22日):中間選挙前夜の「アメリカ社会主義共和国」で株式を恵むAI長者、戦費の財布を誰が握るか</span>
マスク氏が全米の子どもたちへ贈るというスペースXの株式は総額で105億ドルとの試算も[ホワイトハウスで開催された「超知能(Super Intelligence)」に関する会合後、トランプ大統領が見守る中で記者団の質問に答えるマスク氏=2026年9月29日、アメリカ・ワシントンDC](C)Tierney L. Cross/POOL via CNP/IN via Reuters Connect

9月に入って有権者のAIに対する不信が急速に深まる中、「AI長者」たちは金融資産を持たない「恵まれない人々」に富を還流させる仕組みを続々と打ち出す。トランプ政権も後押しする。それは反エスタブリッシュメント層をいわば「AI相場の株主」に変え、利害関係者として巻き込む動きと言えるだろう。開戦から8か月を経過しても実は何も成立していないイラン戦争専用の予算は、いつ、どのような形で確保されるのか。――トランプ大統領と政権キーパーソンから飛び出した発言を、ストリート・インサイツ代表取締役・安田佐和子氏がマーケットへの影響を中心に詳細解説。

 「今や我々は皆、社会主義者」。金融危機さなかの2009年2月、ニューズウィーク誌はカバーにこう掲げた。あれから17年。同誌10月23日号の表紙は「アメリカ社会主義共和国」。ゾーラン・マムダニ・ニューヨーク市長、バーニー・サンダース上院議員ら民主社会主義の旗手たちが、赤旗の下、人民服姿で自転車を漕いでいる。

 ホワイトハウスはこの企画を社会主義「美化」の組織的運動だと非難した。中間選挙が目前に迫り、民主党内で存在感を増す左派への政権の攻撃は激しさを増す。大統領経済諮問委員会(CEA)は10月、民主社会主義者たちの掲げる政策を実行すれば10年で49兆ドルの財政負担とのレポートを公表した。

左右の垣根を超える「AIの富を国民に配れ」

 サンダース氏が照準を合わせるのはAIの生む富だ。同氏が6月に提出した法案は、AI関連の年間売上高が2億ドル以上の企業に株式の50%を国へ納めさせ、約7兆ドルの政府系ファンドを創設して国民に配当する構想だ。だが、実は民主社会主義者を批判するホワイトハウスの主も、ここではサンダース氏に近い発想を持つ。ドナルド・トランプ大統領は同月、政府がオープンAIやアンソロピックなどの株式を直接持つ可能性に触れ、AI企業を「この革命のパートナーにする。素晴らしいことだ」と記者団に語った。

 AIの富を国民に配れ――左右の垣根を超えて広がるこの要求に、AIで富を築く側も答えている。オープンAIは2025年10月の組織再編で、非営利の財団に約1,300億ドル相当の株式を付与した。アンソロピックはこの10月18日、自社株の5%を新設の公益基金に拠出すると発表、これは5月の評価額で換算すると約480億ドルに上る。同社は創業者らの寄付の誓約と合わせ、株式の約20%を「公共の利益」に振り向けるとしている。スペースXのイーロン・マスクCEOもXで呼応し、翌19日、来年に全米の子どもへ自身のスペースX株を1株ずつ贈ると表明した。18歳未満の約7,200万人を対象とするニューズウィーク誌の試算では、総額は約105億ドルに上る【チャート1】。

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