政治

国民安全保障国家論――緊急提言「ポスト・コロナ時代」の国家構想(上)

2021年9月21日

コロナ危機は日本の「有事」に対する脆弱性を極めて明確に教えている。政府・国家の体制、法制、組織文化、リーダーシップにビジョンとガバナンスを欠いたその姿は、戦後日本が安全保障の観点から国家統治を見直す機会を先送りしてきたからに他ならない。政府と国民が自らを守るために協業する国家と社会の形=「国民安全保障国家」(national security state)の構築を急げ。

平時不作為体制が“泥縄貧乏”の危機対応を生む

   菅義偉首相の退陣は、1年前の安倍晋三首相の辞任同様、コロナ危機の下、日本の政治指導者が政府の危機管理体制不全と国民との信頼関係の欠如と自身の肉体的あるいは政治的な極度のストレスを克服できないまま「泥縄」の対応を重ねた挙句、退場を迫られた、すなわち国家的危機における危機管理の失敗の帰結でもある。

   デルタ株のコロナ感染が日本を覆った。この夏、政府は4回目の緊急事態宣言発出を余儀なくされた。ワクチン接種を急ピッチで進めたものの、感染拡大は止まらず、各地で医療ひっ迫が起こった。欧米諸国よりはるかに多い病床数(人口比)を有するにもかかわらず、欧米諸国よりはるかに少ない治療必要患者(同)を病院に入院させることができず、自宅やホテルなどで死亡する例が相次いだ。80%の国民が政府の病床確保策に「不安を感じる」と答えた。菅義偉内閣の支持率は30%を割り込んだ。

   2020年春以降の政府の取り組みは、感染者の追跡もマスク配布もPCR等検査も感染者用の病床確保もワクチン接種も、それこそ泥縄に次ぐ泥縄だった。1人10万円を配る「特別定額給付金」のオンライン申請では、誤入力や重複申請が相次ぎ、自治体の職員がデータ照合に追われた。企業が働き手に払う休業手当の費用を支援する「雇用調整助成金」もシステムトラブルを起こし、オンライン申請は一時停止に追い込まれた。感染者との接触を知らせるスマホアプリCOCOAは、4カ月以上も不具合が放置されていた。ワクチン・パスポート(感染症予防接種証明書)を導入するにしても、自治体ごとに別々のアプリを使って接種証明書を発給している状態で依然、日本は「デジタル敗戦」から抜け出せない。

   常日頃、「国民の安全・安心」を政治の最優先課題のように唱えているのにいざという時、日本政府は国民を守ることができないのではないか、と国民は感じている。憲法第25条は「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と謳っている。国は、その義務を果たしていないのではないか、と国民は不安である。……

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