政治

脚光を浴びる米シンクタンク「戦争研究所」のキーパーソンと独自の立ち位置

2022年12月4日

ロシア・ウクライナ戦争を分析する“基礎資料”、戦争研究所(ISW)のレポートが連日メディアに登場するが、同研究所そのものが表舞台に出ることは稀だろう。創設は有名なネオコン一族、幹部には軍の有力OBが名を連ねる一方で、研究員は若手中心に30人ほどであり組織の収入も多くはない。近年主流の「アドボカシー・タンク(唱導型のシンクタンク)」から敢えて距離を置くかのような戦争研究所には謎も多い。

 

 2月のロシア・ウクライナ戦争勃発以来、アメリカの戦争研究所(ISW)が発表する戦況レポートは、メディアで紹介されない日はないと言ってもよいほど、注目を集めている。しかし、奇妙なことに、その注目度の高さに反して戦争研究所それ自体の情報は乏しい。事実、アメリカのメディアでこのシンクタンクに焦点を当てたものは、2014年に国際政治学者のスティーブン・ウォルトが『フォーリン・ポリシー』誌上で発表したレポート [1]や、同時期に発表された『ネイション』誌のレポート[2] ぐらいであり、しかも前者は戦争研究所そのものを取り上げたものではない。「シンクタンク・ウォッチ」というアメリカのシンクタンク情報を定期的に更新しているサイトを見ても、戦争研究所についての情報はごくわずかである。このように情報が限られる中で、本稿では戦争研究所のホームページ掲載情報やその主な顔ぶれを手掛かりに、このシンクタンクについて考えてみたい。

創設者は大物ネオコン一族

 戦争研究所のホームページによると、その創設はイラク情勢が混迷を深めていた2007年に遡る。不正確な情報が政策決定者に及ぼす有害な影響を懸念し、イラクにおける進行中の軍事作戦と反乱勢力の攻撃について、オープンソースをもとにリアルタイムで独立した分析を提供することを目的に設立された。

 戦争研究所は非営利団体であり、法的には内国歳入法上の第501条(c)項3号団体である。第501条(c)項では法人税の免税団体が列挙されており、これに該当する団体は寄付金控除の対象になるため、多くの寄付を期待できる。ただしその代わりに、ロビー活動に対する制限や選挙への関わりの禁止など、政治活動の面で大きな制約を課されている。非営利団体の財務状況は内国歳入庁に毎年提出する財務報告書で知ることができるが、戦争研究所の財務報告書を見ると、創設以来、年間収入額は200万ドル台で推移している。400万ドル近くに達した年度もあるものの、アメリカの有力シンクタンクが数千万ドルもの年間収入を得ていることと比べれば、戦争研究所は決して規模の大きいシンクタンクではない。……

おすすめの記事

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの動画

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

ニュースレターを購読する

新潮QUEは、「問う力」を養っていくためのサブスクリプションサービスです。

無料登録する