5.画期的な日韓関係改善の決断
■約12年ぶりのシャトル外交再開
韓国政府は3月6日、それまで日韓関係の懸案となっていた強制労働問題、いわゆる元徴用工問題について、韓国政府自らが自国民に補償金を支払う「解決策」を発表した。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、昨年の政権成立以降、日韓関係の改善、および米韓同盟の強化を重要な政策目標として掲げてきて、今回の決定もそのための重要な基礎になることが考えられる。3月16日には尹大統領が訪日し、約12年ぶりに両国首脳のシャトル外交が再開された。韓国国内で、このような現政権の方針はどのように受け止められたのであろうか。
韓国のメディアでは、この決定を好意的に受け止める保守と、厳しい批判を加える進歩とで、大きく評価が分かれている。たとえば、保守系の『中央日報』の3月7日付社説では、「『苦肉の策』の徴用問題解決法、日韓関係正常化のきっかけにするべき」と題して、これまで解決に向けて消極的であった日本側が徐々に呼びかけに呼応する姿勢を示しているのは、前向きだと論じる[ 사설「 ʻ고육책ʼ 징용 해법…한·일 관계 정상화 계기로 살려가길 (「苦⾁の策」の徴⽤問題解決法、日韓関係正常化のきっかけにするべき)」、『中央日報』、2023年3⽉7⽇]。
確かに、日本企業の賠償責任が反映されていないという批判が、韓国国内では見られる。だが、その代わりに、日韓両国の経済団体が共同で参加する「未来青年基金」設立によって、迂回的に徴用企業が参加する折衷案が提示された。また、日本政府はそれまでの輸出規制の解除も協議することとした。この社説は、慎重な言葉を選びつつ、韓国政府は国内の批判に耳を傾けて2015年の慰安婦合意の経験を繰り返さないように心がけ、日本政府は誠意ある応答をすることを願うと論じている。……