2023年もご愛読いただきありがとうございました。
ハマスによるイスラエルへの大規模テロが発生したのは、「中東は過去20年で最も静かだ」とジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が語って僅か8日後のことでした。2020年以来の新型コロナウイルス禍に加え、長期化したロシア・ウクライナ戦争や米中対立といった課題を抱えて始まった2023年が、更に深い混迷の中で終わろうとしています。
改めて実感するのは、ロシア・ウクライナ戦争で一気に露わになった国際秩序の動揺が、各地域、様々な分野で、より具体的な形をとった1年だということです。武力を使った現行秩序への挑戦のみならず、それは経済やテクノロジー分野の制度やルールめぐる、各国・地域間の鍔迫り合いにも及んでいます。対ロ経済制裁や対中国デリスキングなどを通じて分断されて行く世界では、それぞれの陣営の利益をいかに確保するかが前景化します。根底には各国・地域の安全保障問題があるだけに、このパワーポリティクス的な側面を一概に否定するわけにもいかない難しさがあります。
コロナ禍への対応で生じたバブルが最大のリスクだった世界経済は、アメリカ景気の軟着陸が現実味を増していることを筆頭に、年初の悲観シナリオを覆す結果になりました。ただし、バイデン政経の経済政策が「イエレン=サリバン・ドクトリン」と呼ばれるように、経済と安全保障の一体化は急速に進んでいます。昨年、一昨年あたりは議論百出で焦点がバラバラな印象を禁じえなかった「経済安全保障」は、いまや確固とした国家戦略の柱となった観があります。……