医療・ウェルネス

ロックダウンの功罪――法的強制力のない日本の「緊急事態宣言」は有効だったか

2024年8月14日

欧州各国はロックダウンで人々の行動を強制的に制限した。人と人の接触を極力減らすことは感染症対策として重要であり、ロックダウンはその点で有効だが、一方で都合3回を実施したイギリスは日本を上回る死者を出している。国民生活が受けるストレスやリスクを正確に踏まえた政治判断など、行動制限と関連する要素も総合的に視野に入れて、これまでの対策を検証する必要がある。

 2024年7月上旬、ある機会を得てイギリスの医療機関および政府の感染症対策に関わる各種の団体を訪問することができた。イギリスは新型コロナウイルス感染症に関する様々な疫学的解析や遺伝子解析を当初から積極的に実施し、それらによって得られた情報は諸外国に抜きんでていた。しかし、パンデミックが始まった当初、多くの感染者が出て、高齢者を中心に死者数も多く報告されていた。

 そこで、実際にイギリスではどのような対応を取ったのか、特にロックダウンという感染対策は本当に有効だったのかなどについて、そのやりとりを含めて感じたことを報告したい。

イギリスでは何が起こっていたか

 日本では法律上の建て付けにより、強制力を持って外出などを禁止するようなロックダウンは実施できない。しかし、英国をはじめ欧州各国の多くはロックダウンを実施した。当時の状況は日本でも報道され、人影が消えてまるでゴーストタウンになったかのような街中の風景が映し出された。テレビ局の特派員は、特別な許可がないと仕事に行けず、薬を受け取ったり生活必需品の買い物をする以外は、外出は許されないといった状況を説明していた。

 当時、「イギリスは大変だな」という感想を持たれた方は多かったと思うが、それがどれほどの深刻さなのかは伝わらなかった。そこで、一般の市民はロックダウンの際にどう過ごしたのか聞いてみると、予想以上に厳しかったようである。

 イギリスはこれまで3度のロックダウンを行ってきた(1回目は20年3月23日~5月上旬、2回目は20年11月5日~12月2日、3回目は21年1月上旬~夏)。最も厳しい対策がとられた時期には外出は必要最小限に抑えられ、警察官が街中で監視していて、外出の要件を満たしていない場合は逮捕されるケースも少なく無かったという。さらに人々にとって耐え難かったのは、葬儀への参列が制限され、家族が新型コロナで死亡しても満足に死者を見送れないことであった。

 まさにイギリスの国民にとって、ロックダウンはトラウマになっていた。それが今でも理解できる事実として、今年7月に行われた総選挙で得票率を大きく伸ばした政党のリフォームUKが掲げた選挙公約の一つは、今後パンデミックが起こってもロックダウンはしないということであった。この政策に多くの国民の支持が得られ、選挙で躍進できたようである。……

おすすめの動画

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

ニュースレターを購読する

新潮QUEは、「問う力」を養っていくためのサブスクリプションサービスです。

無料登録する