すでに実戦で使用されているAI兵器
2022年2月に勃発したロシア・ウクライナ戦争は、3年を過ぎ、なお継続中である。2023年10月に再発したイスラエル・ハマス戦争は、恒久的な停戦合意に達していない。それらの戦場では、実験場の如く、新たな技術や兵器が大量に投入されてきた。AI(人工知能)もそうである。たとえば、AIの意思決定支援システム(AI-DSS)として、ウクライナ軍はAIが敵・味方の戦況のビッグ・データを基に効率的な攻撃法を提言する「ゴッサム」システムを、イスラエル軍はAIが物的標的をリスト化する「ハブソラ」システム、人的標的をリスト化する「ラベンダー」システムおよびその人的標的を追跡する「パパはどこ?」システムを活用している。
さらに、ウクライナ軍は、2023年9月以降、機械学習に基づき、戦車・兵員輸送車などの装備を含む64種類の軍事標的を識別できるAI視覚ソフトウェア搭載のウクライナ・セイカー社のスカウト・ドローンを投入している。しかも、それは、偵察モードだけでなく、攻撃モードで小規模ながら実際に自律攻撃をしたという。その自律能力を疑問視する意見もあるが、完全自律型攻撃ドローンが出現間近なことだけは確かである。
軍民両用のAIは、人間の諸活動での利便性の向上という利点と予測不可能な潜在的リスクを併せ持つことから、民生領域・軍事領域全般・兵器領域の3領域において、研究開発の促進と許容範囲の規制が同時進行している。3領域でのAI使用の規制状況を踏まえ、AI兵器規制の現状と今後の展望を考える。【表1:AI利用領域と規制状況】参照。
民生用AIの規制動向:「ソフト・ロー」から「ハード・ロー」へ
民生用AIの規制は、2019年以降、国際社会で活発に議論されてきた。G7、G20、EU(欧州連合)、OECD(経済協力開発機構)およびUNESCO(国連教育科学文化機関)は、採択文書において、主体は人間であり、AIは補完的役割に徹し人間の監視下に置かれると規定した(人間中心アプローチ)。それらに共通する内容は、バイアスを軽減する公平性、AI本体の安全性や信頼性、不具合の究明のための透明性や追跡可能性、不具合を解除・停止する制御可能性、そして、AI使用における人間の責任性である。また、AIリスクの程度に応じて禁止と規制に分けるリスク・ベース・アプローチが採用された。ただし、それらの文書は、国際条約の法文書(ハード・ロー)でなく、倫理規範や原則指針などの非法文書(ソフト・ロー)の形式で規定された。……