政治

高市発言「撤回」は習近平政権にとって「チャンス」でしかない(上)

2025年11月28日

「台湾有事は存立危機事態になりうる」との11月7日の首相発言のあと、中国共産党は13日午後まで事実上の沈黙を続けた。8日の薛剣大阪総領事「汚い首」投稿は独断だったと考えられる。習近平はこの間に高市の評価を大きく変え、「高市打倒」に舵を切ったとみて間違いない。首相発言と政府見解の整合性といういわば内向きの議論が続く一方、世論は対中関係の悪化を強く意識するという現状は、対日威圧と宣伝戦を強める中国側の思惑通りの展開ではないのか。

 台湾有事が集団的自衛権を行使可能な「存立危機事態」になり得るとした高市早苗首相の国会答弁をめぐり、中国政府が対日批判をエスカレートさせている背景には、習近平国家主席による「闘争指示」があった。「主席にならえ」が最優先される中国官僚システムのなかで、日中関係悪化の長期化はもはや不可避である。

 台湾問題など、いかなる犠牲を払ってでも譲らない「核心的利益」に関して日本側が「仕掛けてきた」ととらえれば、それを口実にして「倍返し」的に報復して日本を追い込み、対中国通商交渉を重視するドナルド・トランプ米大統領も巻き込みながら、自分たちにとって有利な状況を新たに生み出そうとする戦略を強化している。われわれが注視しなければならないのは、共産党の真の狙いは何なのかを見極め、冷静に対応することだ。

中国が注視した高市内閣からの「前向きなシグナル」

「高市発言」が直接の発端となった今回の日中対立劇の根源は、中国共産党がもとから「右翼・タカ派・親台湾」と警戒した高市との向き合い方を内部でどう認識したか、という点に行き着く。まずは、10月4日に高市が自民党総裁に就任してからの中国側の動きを時系列的に検証してみたい。

 習近平は、2013年3月の国家主席就任以降、日本に新たな首相が誕生するたびに就任当日に祝電を送り、それを公表してきた。しかし高市首相に対して祝電を送ったという発表はなかった。つまり祝電送付が明らかになった後で、高市が靖国神社参拝や台湾問題などで「反中」的姿勢を示すことに神経をとがらせていたのだ。……

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