印象に残る人と、すぐに記憶から薄れてしまう人がいます。たとえば、昨晩の夕食の話題の伝え方一つをとっても、単に「カレーを食べました」とだけ言う人よりも、「雨の帰り道に、少し冷えた体で食べた温かいカレーがやけにおいしかった」と語る人のほうが、記憶に残るのではないでしょうか。
4月の『米国科学アカデミー紀要』に「表現の深さの違いには人間関係を左右する深い意味がある」との論文が発表されました。カナダ・トロント大学のモスコヴィチ博士らによる研究です。
「カレーはインド料理である」といったような事実の記憶のことを、心理学では「意味記憶」と呼びます。一方、「いつどこで何があって、どんなだったか」というような、具体的な経験の記憶を「エピソード記憶」と呼びます。モスコヴィチ博士らは、これら2つの記憶の違いが、記憶の質としての差異にとどまらず、対人関係においても異なる影響を持つことを示したのです。