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第3回 体罰と共に消えている教育現場の「常識」とは 戸塚宏『本能の力』を読む

2026年6月12日


<span>第3回 体罰と共に消えている教育現場の「常識」とは 戸塚宏『本能の力』を読む</span>
戸塚宏氏

 プロ野球・読売巨人軍の阿部慎之助前監督の逮捕、辞任の問題は、体罰の是非という古くて新しい問題をクローズアップすることとなっている。元Jリーガーの高崎寛之氏は、自身のXで阿部監督への同情コメントと共に、わが子に「手をあげる」こともあると明言。それがまた賛否を呼ぶ格好となった。
 塾経営者の顔も持つ作家の物江潤氏は体罰には反対であるものの、一方で教育現場の実態から離れた議論が目立つことに警鐘を鳴らす。「禁じられた教養」第3回で取り上げるのは戸塚宏・戸塚ヨットスクール校長の著書『本能の力』である。

戸塚ヨットスクールを求めているのは誰か――暴力を呼び寄せる「崇高な理想」の罪

 戸塚宏氏の著書『本能の力』(新潮新書)が、発売から約二十年が経過した今なお、読まれ続けているという。戸塚氏のYouTubeチャンネル(令和ヨットスクール)も登録者数10万超というから、一定の支持者がいることは明らかだ。

 『本能の力』を読み始めると、一分とかからずに体罰肯定論が現れる。途中、賛同できない持論が次々展開される。読了するまで眉をひそめてしまうこと、しばしばであった。

 同書では、戸塚ヨットスクールの実績がエピソードと共に多く紹介されている。死亡者も出したが、救われた生徒や親もいるということだろうか。戸塚氏の持論である「脳幹論」についても述べられている。ただし、本稿ではその真偽も含め触れない。論点は別にある。

 筆者自身は、戸塚氏の体罰肯定論には与しない。

 しかし、それでも同書には耳を傾けるべきものがある。なぜならば、そこには今日の学校教育に抜け落ちている「二つの常識」が記されているからだ。そして私自身、その問題意識については賛同できる。

 結論を先取りすれば、その常識とは「訓練の実施」と「非常時モードの運用」の重要性である。現在の学校では集団生活を守るための訓練や、適切な学習環境を維持するための指導が、必ずしも満足に実施できていない。また、他生徒の学習を妨げる指導困難な生徒の出現という非常時には、本来、「出席停止制度」を運用することが可能とされている。しかし、この非常時モードはほとんど運用されていない。結果として「加害者」が出席し続け、「被害者」が不登校になるという事態を招きやすい。

 戸塚氏は子どもたちには訓練が必要であると説く。さらに非常時にはそれに適した対応があるとも。

「体罰は善なり」というメッセージに気を取られがちだが、この「二つの常識」に関する戸塚氏の指摘は、現在の学校教育の弱点を衝いている面があることは否定できない。

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