背任で逮捕された人物との「並々ならぬ関係」
〈これも天命かなと、ライフワークかなと思い、勇気をもって受けた〉――。
6月2日に行われた記者会見で、会長職を引き受けた思いをこう表現した横尾氏。しかし、4月30日に東電が新会長内定を公表してから、横尾氏を知る人々の間では動揺が広がっているという。
彼の経歴について、経済部デスクが解説する。
「慶應大学商学部を卒業後、日本興業銀行に入行し、2000年には名古屋支店長に就任しました。07年にみずほ証券社長、11年には同会長を歴任。15~19年には経済同友会の副代表幹事をつとめていた。現在は政府系ファンド『産業革新投資機構』すなわちJICの社長です」
一見、きわめて順風満帆である。これだけではなぜ動揺が広がるのかわからない。ところが、
「横尾さんは、会社法違反(特別背任)などの疑いで24年に東京地検特捜部に逮捕・起訴された人物とただならぬ関係にあったんですよ」
そう声をひそめるのは、さる政府関係者。
「その人物とは、経営コンサル会社の『IDI』や『IDIインフラストラクチャーズ』(以下IDII)という投資ファンド運営会社の元代表・埼玉浩史被告(62)です」(同)
埼玉被告は、業務委託費を装ってシンガポールの法人に2000万円以上を不正送金し、IDIIに損害を与えたとされている。
「今年3月に東京地裁で行われた初公判では“架空の業務への支払いという認識はない”“会社に損害を与えるつもりもなかった”と、あくまで無罪を主張していました」(社会部記者)
IDIグループの関係者は埼玉被告の人となりについて、こう述べる。
「基本的にはイケイケで、ビジョンを語らせると話はうまい。迫力もあるし、ペラペラと饒舌にまくしたてるんです。その一方、理性的な話し方もできるので、人を惹きつけるのですが、やっていることはめちゃくちゃ。それは、IDIグループ関連でおびただしい件数の民事訴訟が発生していることからも明らかです」
そうした男と横尾氏とに、どのようなつながりがあるのだろうか。
「埼玉さんは興銀時代の横尾さんの部下でした」
と、この関係者が続ける。
「03年に埼玉さんがIDIを設立した際には横尾さんが資金面などでサポートしました。以降、横尾さんはIDIグループの企業に取締役や特別顧問といった立場で関わり、守護神さながらに埼玉さんを支えてきたのです」(同)
並みの“ビジネスパートナー”とは一線を画す間柄だったようで、
「横尾さんには、IDIグループの関係各社からこれまでにのべ1億数千万円の報酬が支払われてきた。それだけであれば問題ないのですが……」(同)
として、こう溜息まじりに打ち明ける。
「例えば横尾さんの個人会社はIDIグループのF-Powerという会社と業務委託契約を結んでいた。14年から21年にかけて、1億円以上の報酬も発生しています。ところが、横尾さんがオブザーバーとして立ち会っているはずのF社の取締役会の議事録やメールからは、横尾さんの発言が確認できなかった。1億もの報酬に見合う業務実態があったのか、甚だ疑問だと言わざるを得ません」(同)
さらに、横尾氏と埼玉被告の尋常ならざる“チームプレイ”も明らかになっている。
「20年、IDIIにおいて、埼玉さんによる不透明な経費使用などをめぐる内部通報がありました。そこで、取締役会では外部調査委員会を設置して、埼玉さんの業務の実態を調査することになりました」(同)
IDIIの取締役は6人。そのうち二人は、IDIIに50%出資していた大和証券グループの幹部だった。ちなみに、お笑いコンビ「令和ロマン」松井ケムリの父・松井敏浩氏は当時、大和証券代表執行役副社長で、彼もまたIDIIの取締役をつとめていた。
「横尾さんと埼玉さんは、外部調査委員会を阻止したかったんでしょうね。調査に協力しないばかりか、横尾さんは取締役の一人を呼び出して、“辞任するか、公正中立であること等を宣言する確認書に署名捺印するか”を求めた。この取締役が求めに応じないとみるや、埼玉さんは〈ヤバいですね〉〈○○(取締役)をどう料理していくか、思案中です。笑笑〉〈横尾さんと私で、ハードとマイルドで追い詰めていくのか、完全戦闘モードでいくか、ですね〉などと横尾さんにメッセージを送っていました」(同)
悪あがきもむなしく、調査委員会は報告書をまとめ、いよいよ20年10月30日、大波乱の取締役会が開催されたのである。
関係者の語った取締役会での「議事妨害疑惑」
出席者の一人が振り返る。
「6人の取締役がいて、埼玉さんと横尾さんの二人対残りの4人という構図でした。とにかく全員が“黙れ”“静かに”と怒鳴り合っていましたが、一番ドスのきいた声で“黙らっしゃい”と言っていたのは横尾さんでしたね」