連載 > Foresight

「米国のようには振る舞えない中国」に方針転換を選ばせてはならない

2026年5月12日


<span>「米国のようには振る舞えない中国」に方針転換を選ばせてはならない</span>

米中間には新たな相互作用が生じる可能性がある。国際ルール無視のトランプ大統領の振る舞いは、習近平指導部にとって軍事・外交に戦略的修正を加える動機となり得るからだ。ベネズエラやイランなど友好国が米国から攻撃され、ナショナリズムが国粋化した中国国内では「何もしないのか」との批判も高まっている。だが、現行国際秩序のメリットを享受して大国化し、「口は出すが本格的な介入はしない」路線をとってきた中国が、米国のように方針転換するのはコストに見合わないものでもある。この厄介な隣国の事情を意識した対中関係の構築が、さらに重要になるだろう。

  中国の急速な台頭が、地政学的な変動と経済の摩擦を引き起こしている。それが、すでに深刻化していた米国の国内矛盾をトランプ現象という形で表に引き出した側面は確かにある。中国の経済規模は、この10年でさらに倍増し、技術革新も進み、軍事力の増強も続き、外交も積極化し、その存在感は急速に増大している。今や、中国と世界、とりわけ米中の相互作用が、世界のこれからに重大な影響を及ぼす時代となった。

 主役は米国だが、中国の動きにも目を離せない。ドナルド・トランプ大統領の国際ルール無視は続いている。米国の動きが習近平指導部の国際秩序観、軍事力の位置づけ、外交観にどのような戦略的修正を迫っているのであろうか。若しここに大きな修正が加えられれば、現在以上に厄介な隣国が登場することになる。今回はここを考えてみたい。

習近平路線が「経済」だけ手出しできない理由とは

 2008年のリーマン・ショック以降、中国は自国の大国化を自覚し、押さえ込まれていた国粋主義的ナショナリズムが噴出し、自己主張の強い対外姿勢に転じた。これは国内派と国際派、政治・イデオロギー重視派と経済重視派の抗争で前者が勝利した結果だと言える。その帰結が2012年から作り上げられていく習近平路線であり、政治・イデオロギーと国家の安全を重視する国内派が牛耳る国政となって行った。中国の変化が、米国ひいては世界の中国観を変え、米中の対峙が国際政治の中心に座った。このように一見、中国は米国主導の国際秩序にノーを突きつけ、米国に対抗し世界を牛耳る超大国を目指して邁進しているように見える。

おすすめの記事

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの動画

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

ニュースレターを購読する

新潮QUEは、「問う力」を養っていくためのサブスクリプションサービスです。

無料登録する