社会

プーチン、習近平、金正恩の頭の中――「独裁者」を失脚させるには何が必要なのか

2026年7月24日


<span>プーチン、習近平、金正恩の頭の中――「独裁者」を失脚させるには何が必要なのか</span>

『独裁者の倒し方』(東洋経済新報社)という一冊の本が世界的な反響を呼んでいる。著者は学生時代に独裁体制について研究し、その後コンゴに赴任。幅広く聞き取り調査を続け、独裁体制の権力構造や脆弱性を解き明かした。なぜ権力の頂点にいる独裁者は安易に倒れない、あるいは「倒れよう」としないのか。著者へのインタビューの前編では厄介な隣国も含めた独裁者たちの「頭の中」を探る。(取材・構成 大野和基、文中敬称略)

なぜ独裁者に興味を持ったのか

― まずは、この本『独裁者の倒し方』 (原題:How Tyrants Fall)を執筆するに至った経緯を教えてください。本を書かれた動機としてウラジミール・プーチンが失脚するのを見届けたいという思いがあったのでしょうか?

ディルサス 私は大学で独裁体制について研究していましたが、修士課程を終えた後、博士号は取らないと心に決めていました。図書館に座り続けたり、本を読みふけったり、埃っぽい場所にこもったりするのはもう十分で、もっと広い世界を見たかったんです。そこで、コンゴ民主共和国での仕事を引き受け、当地の惨状を目にしてきました。ある日、同国南東部のルブンバシで職場へ向かって歩いていると、突然、銃声が聞こえました。さらに銃声が続き、しかもそれらは同じ方向からではなく、3つの異なる方向から聞こえてきたのです。

 続いて爆発音が聞こえましたが、それはもっと大きな音で、おそらく迫撃砲かロケットランチャーによるものだったと思います。どうすべきかわからず引き返して同僚に「どうする?」と尋ねると、彼は私を見てただ「何もしない。何もしないんだ」と言いました。彼はコンゴに長く滞在しており、こうした政治的不安にすっかり慣れきっていたのです。「これまでも大丈夫だったんだから、今回もたぶん大丈夫だよ」というわけです。

 後にそれは現職大統領に対するクーデター未遂だとわかりました。自称預言者とその支持者たちが、キンシャサの複数の拠点を攻撃して大統領を倒そうとしたのです。主要空港や軍事施設が攻撃され、公共放送局も反体制派に占拠されました。そして政府側がルブンバシで反撃に出た――それが、あの日私が耳にした銃声だったのです。その出来事は、私の頭から決して離れることはありませんでした。その後、ドイツに戻ったとき、私はこう考えました。

「なぜこうした国々はこれほど不安定なのか」
「権力者たちはどうやってその座に居座り続けているのか」
「どうすれば彼らを排除できるのか」

 その答えを探し求めたことが、博士号の取得につながり、この本へと結実したのです。そして今や、このテーマはコンゴという枠をはるかに超えた重要性を持つようになっています。というのも、一般的に「暴君」や「独裁者」といえば、多くの人はコンゴのことなど思い浮かべないからです。プーチンや金正恩、あるいはイランの指導者といった名前が挙がるのが普通でしょう。つまり、私はまったく別のところから出発し、最終的にこの問題に行き着いたというわけです。

― なるほど。あなたは10年以上にわたって、暴君や独裁者について研究や調査を続けてこられましたね。スパイを含む様々な職業の人々にもインタビューを行っていますが、インタビューや調査の過程で、何が最も困難だと感じましたか? やはり、インタビューの対象者を見つけ出し、彼らにコンタクトを取ることでしょうか?

ディルサス 意外なことにインタビュー相手を見つけること自体はそれほど難しくありませんでした。このテーマを長年研究してきたおかげで、非常に「変わった」人たちをたくさん知っているからです。そして彼らもまた、別の「変わった」人たちとつながりを持っています。ですから、スパイや反政府勢力、あるいは戦争犯罪に関わったような人たちと連絡を取るのは、かなり容易でした。

 一番の難しさは、そうした人々と話す際に「共感」を抱かなければならない点にありました。彼らの立場、なぜあのような行動に出たのか、などを理解しようと努める必要があるからです。

 しかし、子供を兵士として使っていた人物に対して、どうやって共感を示せばよいのでしょうか? 中央アフリカの内戦で反政府勢力のリーダーを務めていた人物と話した時のことを覚えています。彼の率いる組織は多くの子供を兵士として使っていました。それは子供たちが虐待され、死に追いやられるという、極めて残虐な戦争でした。私は彼と電話で話していたのですが、こうした人物を長年研究してきた私でさえ、それはかなり辛いことでした。

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