<span>片山財務相と官邸の“暗闘”の末に…「財務省のエース」左遷の全内幕</span>
財務省庁舎 (C)新潮社

「減税を阻止する敵」として、高市政権による何らかの介入が囁かれていた今夏の財務省人事は、宇波弘貴主計局長の事務次官昇格をはじめ、ふたを開けてみれば順当な結果に落ち着いたとの見方が流れた。しかし“本丸”は別のところにあった。一松旬主計局次長の「更迭人事」――。それが意味することとは何か。背景にあったという官邸と片山さつき財務大臣による“暗闘”のすべてを詳らかにする。

「政権に敵対する官僚」

 財務省に激震が走った。8月7日付の幹部人事で一松旬(ひとつまつ・じゅん)主計局次長が東京税関長に転出する人事が発令されたからだ。一松氏は「近い将来の有力な事務次官候補」とされてきたが、高市早苗首相が設置した社会保障国民会議で消費税減税に反対する同氏の立ち回りが首相官邸に問題視され、実質的な左遷人事となった。東京税関長は「上がりポスト」とされ、これから主要局長や事務次官をうかがう幹部が就く役職ではない。このため、霞が関の中央官僚は高市首相の減税にかける思いの強さに改めて震え上がっている。

 高市首相が率いる自民党は、今年2月の衆院選で「中低所得者を支援するため、給付付き税額控除を導入する。それまでのつなぎ措置として、飲食料品にかかる消費税をゼロ%にする検討を加速する」との公約を掲げた。この公約で大勝した高市首相は、給付付き税額控除や消費税減税を協議するため、与野党の国会議員が参加する社会保障国民会議を設け、具体的な制度設計を委ねた。同会議では給付付き税額控除の制度設計は複雑なため、まずは所得連動給付を先行して導入することで合意したが、消費税減税を巡っては野党各党がそろって反対を表明し、与野党の意見が分かれた。また、消費税率をゼロ%に設定するにはレジシステムの改修に時間がかかるため、最終的に税率は1%にすることになった。自民党内にも減税に反対する意見は根強くあったが、高市首相は記者会見で「選挙公約は国民との約束だ」として反対論を封じ、減税の実施を閣議決定した。

 こうした中、政権内で問題となったのは、社会保障国民会議における議論の進め方だった。同会議は与野党議員が出席する実務者会議と有識者会議に分かれるが、実務者会議に呼ばれた経済団体や農業団体などは次々と減税に反対する考えを表明した。首相サイドからは「なぜ減税に賛成する人を呼ばないのか」と事務局に何度も問い合わせがあったという。この事務局を取り仕切っていたのが、主計局次長で社会保障担当の一松氏だった。

 一松氏は開成高校、東京大学法学部を卒業して財務省(旧大蔵省)に入省した典型的なエリート官僚である。厚生労働省への出向経験を持つなど、特に社会保障制度に精通していることで知られる。それだけに少子高齢化で社会保障費が増大する状況には強い危機感を持ち、社会保障の財源となる消費税の減税には徹底して反対していた。高市政権の誕生に伴い、新川浩嗣事務次官や宇波弘貴主計局長ら財務省の主要幹部が官邸からその動きに目をつけられる中でも、一松氏は減税反対の持論を曲げなかったという。このため、国民会議でも減税に反対する団体ばかりが呼ばれるなど、高市首相や首相周辺からは「政権に敵対する官僚」と反感を買ったようだ。

官邸と片山さつき大臣の“暗闘”の末に

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