「武器化されたボラティリティ」から「政策期待」へ主役交代?
スコット・ベッセント財務長官と言えば、ソロス・ファンド在籍時代の1992年、ポンド危機に見舞われた英政府の通貨防衛に挑んだ側の人物である。2013年には円ショートの成功でも名を上げ、米財務省の経歴にもポンドと円への「伝説的な賭け」で評価を確立したと明記されている。母校イエール大学では非常勤講師として経済史も教えた。市場と歴史の双方を知る人物が、今度は財務長官として市場に勝負を挑んでいる。
9月8日、ベッセント氏は「私は非対称的(市場が把握していない)な情報を持つ。いまや私が胴元だ」、「私に逆らって賭けたいならどうぞ」と発言した。
その第1の狙いは、円売りを積み上げた投機筋への牽制だろう。G20財務相・中央銀行総裁会議を控えた8月30日、ベッセント氏は植田和男日銀総裁が金融政策で「正しい判断」を下す、「リフレ政策であるアベノミクスは終焉を迎えた」と表明。8月31日には日本当局が円高につながる政策を取るとの認識を繰り返し、9月1日にはG20後の会見で「リフレ政策を止めるべきだ」と訴えた。だが、それでも商品先物取引委員会(CFTC)が発表した9月1日までの週のレバレッジ系(ヘッジファンドなど短期筋を表す)による円先物ネット・ショートは10万2188枚と、7月末の介入直前を上回った【チャート1】。ベッセント氏の挑発は、「警告を無視してなお円を売るのか」と市場に迫ったものだ。