アメリカ商務省の建物に、エイブラハム・リンカーンの言葉を記した石碑が掲げられている。奴隷制度に関するものではない。
「特許制度は天才という炎に利益という油を注ぐもの」
第16代大統領に選出される前年、1859年2月に述べたという。リンカーンは、実は自らも特許を取得するほど、特許、つまり知的財産権に基づく発明の保護が産業振興に結びつくと確信していた。実際、アメリカは19世紀末以降、エジソンの蓄音機やベルの電話機など、天才たちによる知財権で守られた発明が工業発展の起爆剤となり、超大国へと進む。
翻って、新型コロナウイルスのパンデミックが続く現在。収束への切り札となったワクチンを迅速に、そしてできるだけ公平に世界に供給するうえで、知財権は、「高い壁だ」という批判を浴びている。 ……