“平和構築/紛争分析”を専門領域にする私は、2月のクーデター以前には、あまりミャンマーについて語りたい願望は持っていなかった。日本においてミャンマーは「東南アジア最後のフロンティア」として、過熱する投資の対象であった。私も日本で仕事をしている以上、日本国内の雰囲気にも相当に影響される。ODA(政府開発援助)もその大部分は日本企業も関わる円借款だ。平和構築/紛争分析の研究者などお呼びではなかった。
もっとも今もなお、日本のエスタブリッシュメント層にとっては、私の存在は甚だ迷惑なものであるようだ。だがミャンマー情勢は混乱の一途をたどっている。紛争分析を忌避していれば、かつての日常が戻ってくるのではないか、と祈るのは、単なる現実逃避でしかない。
そこで本稿では、紛争分析の視点でミャンマーを見るとどうなるか、という観点で議論を進める。第1に、紛争分析枠組みで確認できるミャンマーの紛争地域としての特性、第2に、国際政治から見たミャンマーの地政学的な特性、第3に、近年の紛争分析理論から見たミャンマー情勢の理解の方法、について示唆を提示する。
「抑圧か民主化か」「秩序か混乱か」が紛争構造か
前回(『ミャンマー「平和構築」を阻み国際リスクを高める「歪な国家構造」』2021年5月3日)でも書いたが、4月にミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官が、……