はじめに
今回からこちらの連載をお引き受けすることになった。『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』という初の著作を新潮社さんから上梓したのは2010年の年末だったが、それから10年余の歳月を経てまた新潮社さんのフォーサイトで連載を始めることになったのも何かの縁だろう。
この10年余で日本も世界も激変した。今や、いわゆるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の4社を合計した時価総額は700兆円に迫り、他にも完全復活を遂げたマイクロソフトや自動車の再定義を進めるテスラ、動画配信で急成長するネットフリックス、シェアリングの先鞭をつけたウーバー・テクノロジーズなどを加えると、これらの時価総額合計は1000兆円を超える。
私は新卒で入社して20年余勤務したソニーを2006年に退社し翌年グーグルに加わったが、上記著作でも述べた通り、グーグルの第一印象は「こんな企業には日本の名だたる企業が束になっても到底かなわない」というものだった。同時に、当時ソニーの将来に対して抱いていた強い危機意識は、日本の製造業、産業界、さらには国家に対する危機意識へと一気に高まった。このままでは、世界における日本の産業競争力は弱体化を続け、国家としての存在感すらあっという間に薄まっていくのではないか、という底知れぬ恐怖感に襲われたことを覚えている。
そしてその後の10年で、私がその時に感じたことが次々に現実になってきたように思える。実際、上記GAFAの時価総額だけをみても、日本の国家予算100兆円やGDP(国内総生産)550兆円をはるかに超え、マイクロソフトを加えた5社で比較すると、東証に上場するすべての企業の時価総額を足し合わせても及ばない。まさに一国の存在感を超え、日本企業が束になってもかなわない状況が現実化した。……