1.緊迫のウクライナ情勢
2022年の幕開けは、平和な時代の到来を告げるものとはならなかった。引き続き国際関係は深刻な緊張や対立を孕むものであり、これまで以上に軍事衝突勃発の危機は高まっている。
近年の国際関係を大きく左右してきた米中対立の構図に加えて、ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻が、よりいっそう国際情勢を不安定で不透明なものとしている。軍事侵攻が始まった2月24日以降の議論を取り上げることは次回に譲るが、年末から現在に至るまでの国際論壇はウクライナ情勢をめぐる論考で溢れている。おそらくは、この対立の帰結が今後の国際秩序の行方に長期的な影響を及ぼすとみなされているからであろう。はたして、この緊張状態はいったいどのような結末に至るのであろうか。
■西側の対ロ融和に厳しい批判
昨年末の12月10日付の『フォーリン・アフェアーズ』誌に、ウクライナ外相のドミトロ・クレーバによる論考、「ウクライナを売ってはならない」が掲載された[Dmytro Kuleba, “Don’t Sell Out Ukraine(ウクライナを売ってはならない)”, Foreign Affairs, December 10, 2021]。
ロシアの軍事侵攻が迫る中で、当事国のウクライナの外相によるこの論考は緊張感に溢れたものとなっている。そこでクレーバ外相は、西側諸国のロシアに対する宥和政策を厳しく批判して、ロシアに対しては十分な抑止により対抗する必要があること、ウクライナ国民は西側の一員となるための強固な意志を有していることを、あらためて確認する。そして、「西側、すなわちアメリカ、EU(欧州連合)、NATO(北大西洋条約機構)は、あまりにも小さなことをあまりにも遅く行っている」「ロシアは虚偽を売り込む天才であり、正当性のない保証と一方的な譲歩の要求はまさにそれである」と批判するのだ。……