経済・ビジネス

消えてゆく孫正義氏と“ハゲタカ”との境界線――ソフトバンク「300年成長神話」の危急存亡(1)

2022年4月11日

孫正義氏は企業を育てる資本家なのか、あるいは売却益が目的の投資家なのか。買収時の時価で3兆3000億円を投じた「アーム」の売却をめぐる迷走は、ソフトバンクグループが「孫氏の夢」と利益確保の狭間で、絶えず揺れ動いていることを示している。コロナ禍、アリババを追い詰めた中国のテック規制、金利上昇による資金調達環境の悪化など厳しい逆風に晒されながら、「300年成長し続ける企業グループ」を率いる孫氏の野望が向かう先を連続企画で捉えて行く。

 ソフトバンクグループ(ソフトバンクG)の孫正義会長兼社長は2月8日、傘下の英半導体設計子会社「アーム」を米半導体メーカー「エヌビディア」へ売却する計画の断念と、同社の2022年度中の上場方針を公表した。孫氏はこの記者会見で、「半導体業界史上、最大の上場を目指す」とぶちあげた。

   それから1カ月余り過ぎた3月26日、ソフトバンクGが未上場のアーム株を担保に金融機関から約1兆円を調達すると日本経済新聞が伝えると、週明け28日のソフトバンクG株は続落した。3月15日に年初来安値4210円をつけたものの、株式市場の回復に伴い4月5日に年初来高値の5984円をつけるなど、値動きは荒い。それは投資家と資本家の狭間で揺れる孫氏の姿、市場の評価の迷いと重なる。

アームは孫氏の夢の基盤のはずだった

   そもそもアームは、孫氏が16年7月18日に約240億ポンド(当時約310億ドル、約3兆3000億円)で買収を発表した虎の子とも言える存在だ。買収時直近の終値、1株1189ペンスに約43%のプレミアムをつけた1700ペンスで合意を取り付けた、日本企業による海外での企業買収として過去最大規模の案件だった。

   アームは当時から、スマートフォン向けの半導体設計で確固たる地位を占め、年間148億個のチップを世界市場に供給していた。一方で、年間売上高は1800億円弱にすぎなかった。ソフトバンクGは英国の本社を維持し、同国内の従業員数を5年間で倍増させるなどの破格の条件提示をしたこともあり、「買収価格が高すぎるのではないか」との指摘も出ていた。……

おすすめの記事

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの動画

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

ニュースレターを購読する

新潮QUEは、「問う力」を養っていくためのサブスクリプションサービスです。

無料登録する