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卵はなぜ物価の優等生と言われたのか 養鶏場で起きる「国産肥料」海外流出

2026年7月22日


<span>卵はなぜ物価の優等生と言われたのか 養鶏場で起きる「国産肥料」海外流出</span>
京葉ポートリー多古農場

中東情勢に端を発する化学肥料の価格高騰が、日本の農業経営を直撃しようとしている。代替品として期待されるのが、家畜糞や下水汚泥などを原料とする「国産肥料」だ。ところが現実には、その多くが国内で活用されぬまま、ベトナムをはじめとする海外へと流出している。千葉県の養鶏場を訪ね、欧州発の最新システムと、資源流出の実態を取材した。

国内有数の養鶏場の挑戦

 水の張られた田んぼの間を車で走っていくと、小高い丘の上に緑色の巨大な建屋と金属製のタンクがずらりと並ぶ光景が見えてくる。ここは120万羽ものニワトリを飼う、国内有数の養鶏場だ。12棟ある鶏舎の温度や湿度、照明などの環境はコンピューターで管理され、給餌から卵の回収、洗浄、消毒まで自動化されている。

 この養鶏場(株式会社京葉ポートリーが運営)が誇る、日本で唯一無二の技術の粋。それは最新鋭のコンピューター制御でも自動の卵洗浄システムでもない。糞の処理施設である。

 約15億円を投じ、オランダから設備を直輸入して整備した。鶏舎と隣り合う広い建屋では、ベルトコンベアーで糞が自動で運ばれてくる。室内の温度は高く、湿度は低く保たれている。

 ニワトリの体温は40度以上あり、鶏舎は常に排気し続けなければならない。ふつうはそのまま外に排気して終わりだが、ここでは糞の乾燥に再利用する。

欧州発の最新システム

 採用したのは、オランダをはじめEU(欧州連合)で広まっている手法だ。京葉ポートリーを傘下に持つクレストグループのアグリ環境チームで顧問を務める石澤直士さんは「排気を一か所に集めて熱と風を集中させることで、鶏糞を効率よく乾燥させている」と話す。

 加温や冷却に新たなエネルギーを極力投じない設計になっている。120万羽が一日に放出する熱量は、30~40畳用の大火力のストーブの1136倍にもなる。このエネルギーを使わない手はない。

オランダから設備を輸入した鶏糞の乾燥施設

 養鶏業の課題の一つが糞の処理だ。国内で主流の発酵による堆肥化は、アンモニアが生じて臭ううえ、豊富な窒素分が揮発して失われる。乾燥という手法を選んだのは「アンモニアの発生を抑えて臭いをなくすことと、発酵させずに乾燥させて窒素分を高めること。この二つが目的です」と石澤さん。

 糞は急速乾燥させた後、70度の熱で低温殺菌する。

「低温殺菌でサルモネラ菌や大腸菌などの有害な菌を除去し、冷却することで、変質しない安定した肥料『ソイルボーン』を製造しています」

 チームマネージャーの井上将志さんがこう説明する。

 オランダとの気候の違いに苦労もした。夏場、気温を下げるために鶏舎の外壁に水を流すと湿度が上がる。暑いとニワトリが水をよく飲み、糞がべたつく。技術者の鈴木哲さんは「最初は鶏舎の排気だけで処理していたが、うまくいかず、屋根裏から乾燥した空気を取り入れるように改造しました」と明かす。

 真夏の一時期だけは堆肥化せざるを得ないが、残り9割はソイルボーンにできるまでになった。

 ソイルボーンは、「土(soil)がみごとによみがえる(reborn)」という意味を込めて命名した。窒素成分が4%以上と豊富に含まれ、化学肥料と遜色ない使い方ができるうえ、有機JASに適合している。コメや葉物、根菜など、さまざまな作物で収量の向上や食味改善の効果が実証されている。

鶏糞は良くないという勘違い

 高い品質ながら、ソイルボーンは国内で思うように売れていない。理由の一つに、農家の間に根強い鶏糞への誤解がある。

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