政治

フィンランドとスウェーデンをNATO加盟に向かわせた危機――ロシアの「オウンゴール」を検証する

2022年5月2日

フィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請が5月半ばにも行われる見通しだ。NATO との関係を着実に深めて来た両国が、動きを一気に加速する背景には、ロシアによるウクライナ侵略とともに、1975年に東西両ブロックの間で合意された「ヘルシンキ最終議定書」の「同盟選択権」をロシアが否定しようとした事実がある。まさにいま、第二次世界大戦後の欧州国際秩序に大転換が起きようとしている。

 フィンランドとスウェーデンといえば、北欧の中立国として知られる。より正確にいえば、NATO(北大西洋条約機構)に加盟しないという意味での「軍事的非同盟」である。いずれにしても重要なのは、第二次世界大戦終結、そしてNATO創設から70年以上にわたってNATO非加盟を貫いてきたことであり、結果として北欧にはNATO非加盟地帯が存在し、それは欧州秩序の特徴の一つでもあった。それがいま変わろうとしている。フィンランドとスウェーデンのNATO加盟が近づいているのである。

 近くなされるといわれる両国のNATO加盟申請の背景には何があるのか。当然、2月24日からのロシアによるウクライナ侵略が大きく存在するが、それだけではない。ここでは3つの段階に分けて考えたい。第1はこれまでのNATOとの関係強化の蓄積であり、第2は、NATOのさらなる不拡大を求めた2021年12月のロシアによる条約提案への反発、そして第3がウクライナ侵略である。

 そのうえで、北欧におけるNATO拡大は何をもたらすのか。以下では、NATO加盟に関して主導権をとってきたフィンランドを軸に検討していこう。

「軍事的非同盟」路線と先進的な軍隊

 まずはこれまでの経緯を確認しておきたい。冒頭で指摘したとおり、NATOに関するフィンランド、スウェーデンの方針は「軍事的非同盟」である。特に冷戦終結後は、「中立」という用語は基本的に使っていない。国際条約に基づく(永世)中立国であるスイスやオーストリアと異なり、フィンランド、スウェーデンは、中立を憲法で定めているわけでもなく、外交・安全保障政策における選択としてNATOに加盟してこなかったのである。……

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