アメリカにおける「政治的二極化」は広く知られており、ここしばらくその傾向が強まっている。こうした二極化は、様々な問題をめぐる深刻な社会的分断や、大統領選結果の激しい揺り戻し――バラク・オバマ(民主党)からドナルド・トランプ(共和党)、そしてジョー・バイデン(民主党)に代わった――を見ればわかる。
しかしながら、現在、アメリカ国民の党派対立はより深刻で危険なフェーズに入りつつあるかもしれない。全米妊娠中絶連合(NAF)によると、連邦最高裁が州に人工妊娠中絶を制限・禁止することを認める判決を下す前の2021年でさえ、クリニックや患者に対する脅迫・暴行が前年比で128%も増えていた。
そして今年6月、中絶の合憲性を覆す最高裁判断が出ると、極左や極右の過激派による暴力の脅威がいっそう増した。また世論調査を見ると、多数派である白人のかなりの割合の人が、人種的マイノリティーの増加を目の当たりにして、この人口動態の変化を止めるためには暴力を使ってもよいと考えていることがわかった。これに対抗する形で、マイノリティー側にも暴力を支持する人たちがいる。
フランスから拡散した「グレート・リプレイスメント・セオリー」
アメリカの人口構成は間違いなく変化している。今世紀半ばまでに、この国は白人よりも黒人やヒスパニック、アジア系など白人層以外が多数になる見通しだ。2020年の国勢調査では、10年前の前回調査に比べて白人の人口が〈減少〉に転じた。1790年の調査開始以来、初めてのことだった。いっぽうでアジア系は35.5%、ヒスパニックは23%、黒人は5.6%、それぞれ人口が増えている。……