前回の記事(『生物学的脅威から国民を守る「バイオディフェンス」戦略に遅れた日本』)では、生物学的脅威に対するバイオディフェンス政策の要としての危機管理医薬品(MCM)について述べた。しかし、実はMCMとは、バイオディフェンスに限らず、公衆衛生分野の危機管理全般で使用される武器であり、用語である。
一般的に、公衆衛生分野の危機管理が対象とする脅威は「CBRNe+自然災害」と捉えられる。CBRNeとは、化学(Chemical)・生物(Biological)・放射性物質(Radiological)・核(Nuclear)・爆発物(explosive)といった脅威の頭文字をとったものである。特にCBRNへの対処は、通常の自然災害とは異なる事態対処や装備品等が必要となることにちなみ、CBRNを総称して「特殊災害」とも呼ばれたりする。eは、時にCBRN全体に共通し得る要素である。
Cの事象には地下鉄サリン事件、Bの事象にはCOVID-19パンデミックやサル痘アウトブレイク、Rの事象には東海村JCO臨界事故や福島原発事故、Nの事象には広島・長崎への原爆投下が挙げられる。これらの脅威による危機への事態対処は、発生源を如何に抑え込むかという点に加え、「如何に多くの国民を救えるか」という国民保護が焦点となる。したがって、危機によって傷病を負った国民を救うための武器、即ち危機管理医薬品(MCM)が必要となるのである。……