政治

中国の大艦隊はどこに向かうのか――「マラッカ・ディレンマ」をめぐる戦い

2022年9月20日


<span>中国の大艦隊はどこに向かうのか――「マラッカ・ディレンマ」をめぐる戦い</span>

中国海軍の発展はこれまで、米軍の太平洋を越えた戦力投射を拒否する「領域拒否」という文脈に基づいて分析されてきた。しかし、中国における近年の建艦ラッシュの背景には、むしろ自国による「制海」と「戦力投射」を重視する戦略がある。その戦略を紐解く鍵が、グローバル化する中国経済のチョークポイント「マラッカ海峡」である。

 

大型水上艦艇の就役数が急増

 近年、中国人民解放軍(PLA)海軍(中国海軍)は空母やミサイル駆逐艦といった大型水上戦闘艦艇を多数建造している。2022年8月、日経新聞は環球時報など中国メディアの情報として、中国東北部大連の造船所において、5隻もの大型ミサイル駆逐艦(「052D型」もしくはこの改良型)が同時に建造中であると報じている。これは「中華イージス」とも呼ばれ、フェーズドアレイ多機能レーダーと垂直発射システム、そしてこれらを制御する先進的な戦闘指揮システムなどから構成され、高い防空能力を有する「ルーヤン(旅洋)級」ミサイル駆逐艦をさす。また、空母については現在「リャオニン(遼寧)」、「シャンドン(山東)」の2隻を運用しているが、本年6月、3隻目の「フージャン(福建)」が進水しており、これは電磁カタパルトを装備する予定である、とされている。このように近年の中国海軍は外洋で多様な任務を遂行できる「ブルー・ウォーター・ネイビー」(blue-water-navy)へと急速に変貌しつつあるが、こうした傾向は主要艦艇の就役状況を観察すると明らかになる。

 (表1)は1996年から2020年の四半世紀における主要艦艇の就役数について、5年ごとに区切って示したものである。1990年代以降、通常型潜水艦の更新はロシアからのキロ級潜水艦購入と、ソン(宋)級、ユアン(元)級といった国産建造を並行する形で急速に進められたが、2014年ころから就役ペースが低下している。また、21世紀初頭まで大量に保有していた小型砲艦・ミサイル艇の更新として2004年から2009年にかけてホウベイ(紅稗)級高速ミサイル艇を60隻まとめて就役させた後、追加建造は確認されていない

 

 一方、2013年ころからルーヤン級、さらに大型の「055型」(レンハイ級)ミサイル巡洋艦など、外洋における長期作戦行動を主目的とする大型水上戦闘艦艇の就役数が急激に増加している。ほかに満載排水量3000トンを超えるものとしてジャンカイ(江凱)級フリゲートも大量に建造しており、2022年初頭において中国海軍は2隻の空母に加え、ミサイル巡洋艦(3隻)、ミサイル駆逐艦(36隻)、ジャンカイ級フリゲート(32隻)と、総計73隻の大型水上戦闘艦艇を保有している。また、大型の輸送艦・強襲揚陸艦の建造ペースも上がっており、これは一義的に台湾有事などにおける地上への戦力投射能力を念頭に置いていると考えられる。……

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