政治

日本がG7をリードすべき“pay-to-play”のウクライナ復興イニシアチブ

2023年5月16日

これから先の15年間でウクライナには推計70兆円以上の復興投資が必要になる。そのうち5分の4前後には、なんらかの投資保証が準備されるべきだろう。G7が設立母体となる信託基金がそのリスク保証を担い得るが、運用には“pay-to-play”――「先に払った者がゲームに参加すべし」の原則を徹底して、中国などウクライナ支援に加わらない国の復興ビジネスへのフリーライドを防ぐ仕組みが求められる。

 日本が議長国を務めるG7首脳会議が目前に迫った。広島で5月19−21日に開かれるこのサミットの焦点はなんと言ってもウクライナでの戦争だ。ウクライナに対する人道的・財政的支援が喫緊の課題だが、岸田文雄首相には首脳たちを究極のゴールにいざなう任務がある。すなわち、戦争終結後のウクライナ復興を成功に導くこと。それがあって初めて、戦争で痛めつけられたウクライナと周辺地域の安定を確保することができる。

 これは容易なことではない。そもそも戦争がいつ終わるかわからないし、ウクライナの勝利となるのか、それとも膠着状態が続くのかも見えない。復興のためのコストは、かつて類を見ない規模になるだろう。しかし日米欧は、ウクライナの勝利のためにすでに莫大なコストかけた挙句、戦後の平和を達成させないというわけにはいかないのだ。

カギとなるのは公的セクターのリスク引き受け

 戦争の前、ウクライナはどちらかと言えば貧しい国だった。2021年の1人当たり所得は、EU(欧州連合)平均の13%に過ぎなかった。このままの貧困が続けば、EUに加盟するという夢も、広汎な世界経済の一員として安定した民主国家になるという希望も、実現は不可能だ。

 G7議長国として日本は、こうした課題に対峙するにあたり、成否を左右する役割を担い得る。今年2月までに、日本はウクライナに62億ユーロ(約9300億円)を拠出しており、これは世界で5番目の金額である。しかし、日本のGDP(国内総生産)からするとわずか0.13%でしかなく、GDP比だけで言えば地中海の島国マルタ以下だ。日本はもっとできるはずだ。特に大きな貢献ができると思われるのは、いったん戦争が終結したあとの、各国の民間セクターが対ウクライナ復興投資を行うための仕組み作りである。

 ウクライナが復興を果たすには、昨年のロシアの侵略前の6年間の平均で2%だった成長率を大きく超えるペースで、長期の、かつ安定した成長を遂げることが求められる。そしてこれは、投資によって勢いづけられた急速な生産性の向上がなければ、達成は不可能だ。

 ウクライナには、FDI(海外直接投資)を力強く呼び寄せてきた実績がある。2016年から2021年にかけての年間FDI流入額は同国GDPの3.3%に当たる。これは隣国ポーランドが享受してきた3.5%にほぼ匹敵する率だ。

 しかしながら、ウクライナが必要とする額は巨大だ。EBRD(欧州復興開発銀行)の未公表の内部試算では、これから先15年間にウクライナが必要とするのは、FDIで1800億ドル(約24兆3000億円)に加えて国内の民間投資も3500億ドル(約47兆2500億円)に上る。そして、これらの投資のうち5分の4前後については、それが執行されるに先立ってなんらかの投資保証が準備されるべきだろう。

 民間復興投資の保険を引き受ける保険会社、再保険会社は、その投資が無に帰することを警戒する。一方で、多国間の枠組みで保険を提供する能力は、現時点では悲しいほど不十分だ。去る2月、日本政府は各国に先駆けて世界銀行のMIGA(多数国間投資保証機関)に2300万ドル(約31億円)を拠出し、「ウクライナ復興・経済支援(SURE)信託基金」の創設を後押しした。この基金は、ウクライナ復興を支える戦後の貿易金融に対する保証や政治リスク保険などを提供するためのものである。日本は他の諸国に対しても、この基金に資金を拠出しサポートするよう強く促すべきだ。しかし、ウクライナがただ一国で今後必要とするであろうFDIに対する保険ニーズは、MIGAが昨年、世界全体に対して拠出した投資保証の総額すら上回るものになり得る。つまり、既存の組織や仕組みだけでは、ウクライナ復興への投資保証を支え切れないのだ。……

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